2016年11月14日

初披露目

少し余裕ができたのか(そんなことはないと思いますが)?秋は講演会に参加できる機会が増えました。10月第2週、CCM輸液・栄養研究会。サルコペニア、脂肪乳剤、人工膵臓、熱傷等多方面にわたるお話。私が興味をもったのは、敗血症時のsyndecan-1の動態について。こいつは言ってみれば、glycocalyxの残骸。endothelial surface layer(ESL)の障害時あがるのは当然。ただし大量輸液でも増加する。重症敗血症時には蘇生に大量輸液を必要とする。敗血症によるESL障害でもあがるので、syndecan-1の増加の要因はダブルパンチ。たぶん大量輸液によるsyndecan-1の増加と敗血症による増加にはrange 差があるのでしょう。もし麻酔管理時にsyndecan-1を計測し、データを集積できれば、両者を判別するカットオフ値が決定できそうですが、研究費を使えないnot richな臨床病院ではまたしても無理そうです。ではESLの障害を感知するためにはどうしたよいか?腎糸球体にもglycocalyxはあり、侵襲(大量輸液も含む)時には同時に障害されます。したがって、糸球体障害マーカである、NGALを測れば、早期に障害を感知できるはずと考えます。しかしこれも資金的に難しそうです。ではお金をかけずにどうESLの障害=血管内皮障害を間接的に(腎糸球体にもESLが存在し、侵襲時にはここも同時に障害されるという特性を活かして)観測するか?NGAL上昇よりもかなり遅れて不確定に増加するアルブミン尿を定量するしかなさそうです。マンモスに石斧で戦うようなイメージです()AKIが進展し、重症化するとメディエーターを介するクロストークで他(多?)臓器障害が起こるという考えを聞いたとき、腎と全身はリンクしているのだなと興奮しましたが、逆にsystemicな血管内皮障害に伴って、その一側面として腎糸球体障害マーカがあがるのも非常に興味深いと思います。腎は体外に排出する尿をつくり、その定性を行いやすいため、障害を早く感知できるのでしょう。肺は言ってみれば呼気を産生しているわけですが、そこにもしESL障害マーカが排出されているのなら、さらに容易に分析できると思いますが、それは夢物語でしょう。

 その2週後は大阪でERASの講演会、ここには外科の先生も参加しておられました。外科の先生からの考えを聞くよい機会であり、大変有意義でした。

 そして11月に入り臨床麻酔学会。私は鉄道を利用しましたが、約4時間半の旅程で、2往復させていただきました。循環器がテーマのポスター座長をさせていただきましたが、かなり勉強になりました。Fontan循環については正直あまり目にすることがないので、多少の文献をよみましたが、読んでみるとなかなか面白い病態(修正病態)だと興味を持ちました。

ひろめ市場で食べたカツオとウツボは美味で、機会があればもう一度ゆっくり訪れたいと思います。残念だったのは地酒を6種類しか飲めなかったこと。

 

                           平田 学



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2016年10月02日

あっさり、こってり どっちも大事

以外にも福知山はラーメンが有名です。その福知山で箸が立つほどのラーメンを見つけました。
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 昔の天一にあった超こってりのようです。不思議と飲み干しても、翌日おなかはゆるくなりませんでした。膠質ラーメンと呼びたくなるようなゼラチン様です。

 膠質といえば、輸液ですが、どちらかといえば晶質輸液の動向のほうが気になります。もう一度ラーメンに例えれば、晶質があっさり 膠質がこってりといったところでしょうか?投与晶質液を等張と仮定し、消化器手術でもありうる時間500mlで投与したとします。そこまで残らないと思いますが、1時間に血管内に125ml、間質に375ml残ったとします。

 すると疑問を生じます。間質にしみだした水はリンパ系によってドレナージされるはずですが、一般的に言われているのは時間当たりのリンパ系の処理能力は160mlほどが限界のはず。細胞内とのやりとりを考慮にいれても時間200mlほどの水が間質に蓄積されていく計算になります。10時間の手術で5000mlの晶質輸液をすると2Lの浮腫を生じるというのはいささか多すぎるような気がします。

 リンパ系の処理能力の手術侵襲にともなう経時変化はどうなのでしょうか?おそらく初期には普段の処理能力を超えて増加するので、間質浮腫を抑制するであろうが、侵襲によるサイトカイン産生に伴い、リンパ系にも炎症を生じドレナージ能力が激減し、浮腫形成が急激に増長されるのではないでしょうか?

 もう一つ疑問なのはリンパ系から静脈内に戻ったときの水の役割。単純に考えれば、循環血液に編入され、前負荷として働きそうですがどうでしょうか?あまり言及している文献をみつけられません。

 では晶質輸液の投与速度はいかほどにしたらよいのでしょうか?私は研修医の先生には消化器系の比較的高侵襲長時間手術ではほぼ等張輸液の1%ブドウ糖加酢酸リンゲル(理論上は高張ですが、実測はほぼ等張)を時間4ml/kgで投与し、フロートラックシステムなどから得られるの動的パラメータを参考に、HES130で必要分だけ補いなさいと指導しています。至適膠質投与量は私の頭では煩雑すぎて推定できないので、動的パラメータを指標にしています。なぜ晶質輸液の投与速度が4ml/kg/hなのかは、多田羅先生の周術期の水動態-シミュレーションによる分析という文献にあるシミュレーションからです。10ml/kgの生食を15分、30分、60分で投与すると血漿増量効果は15分がもっとも高いが、その効果は90分しかつづかないとのこと。しかし私が注目したいのはいずれの投与速度でも150分で血漿中の投与生食は理論的に0となるという点。投与後の残余血漿量は減衰曲線となり、またおそらく輸液を持続投与した場合の血管容量は線形近似できる曲線となるので同一化はできませんが、150分で10ml/kgの輸液による残余血漿量がなくなるのであれば、その1/4ほどを時間当たりいれればよいのではないかというアバウトな考えになります。

 最近はStarling Equationの解釈もかなり変わってきているようです。F=LpS(Pc-Pi)-σ(πp-πi)〕。ややこしい式ですが、要するに血管側と間質で綱引きをして強いのはどっちだ?ということ。その参加者に静水圧と膠質浸透圧がいるということ。以前の解釈では毛細血管の動脈側では血管側が勝ち、静脈側では血管側が負けるのでトータル0であった。実際に間質の静水圧や膠質浸透圧が計測できるようになると、前者は非常に低くまた後者は予想より高いことがわかり、毛細血管全長にわたって血管側が勝利することがわかってきた。すなわち水は漏れるもの。

 となれば、形状は管ではないが、間質も導管と考えることができる。導管の手前にESL(endothelial surface layer)というダムがあるというだけ。通常は発電のために必要な水量がダム上流から下流に向かって流れているだけだが、高侵襲長時間手術や敗血症性ショックに伴う大量輸液投与では大雨が降ったごとくダムのトップを越えて下流に濁流が押し寄せるというようなイメージを持ちます。ちなみに電力の有効利用のため、夜間電力を用いてダム下流から上流に水はポンプでくみ上げられているそうですが、これがリンパ系といったところでしょうか?普段はあまり日のあたらない間質を主役にするならば、その入り口である血管側も大事ですが、その出口の主役たるリンパ系も同様に大事だと思われます。ただしリンパ系に関する知識は全く皆無に等しい私なので、その知識に関しては基礎構築から始めてゆきたいと思います。

 京都第二赤十字病院では専攻医募集中です。興味のある方は同教育研修課までお問合わせください。 

 

                        平田 学



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2016年06月05日

○○は一日にしてならず

ちょっと古いのですが、2005年のRheumatologyに掲載されたMechanism of inflammation in goutというreviewを読みました。

痛風発作の滑膜での組織学的特徴は線状過形成および好中球、単球、リンパ球の浸潤です。誘因は外傷、手術、併存疾患、アルコール多飲(耳が痛い!)や尿酸代謝に関与する薬剤などです。それらが尿酸ナトリウム結晶の新生を促進したり、すでに関節内に沈着した結晶からの単結晶遊離を促進したりします。関節内への結晶沈着には局所体温やPHも関与しているらしい(過度の運動やストレスが関与するというのがここからわかる)。また面白いのは関節内のデブリが核となって結晶が大きくなっていく可能性があること。慢性の炎症が関節内にあればより起こりやすくなるということの裏付け?あんなにきれいな雪の結晶もその核にはちりやほこりを持っているのと似ていて面白く感じます。尿酸ナトリウム結晶に伴う炎症誘発の開始には肥満細胞の脱顆粒が絡んでいるとのこと。ということはmast cellの脱顆粒を防ぐことができれば、痛風発作のtriggerを抑える可能性があるかもしれない。クロモグリク酸、インタール®を内服しておくべきでした?肥満細胞がTNF-αを含む炎症性メディエーターを放出することにより下流に炎症カスケードが展開されていきます。

では次のステップ。何かで炎症が誘発されれば、必ず血管内皮が絡みます。血管内皮が活性化されるともちろん白血球が遊走してきます。その機序は、まずいつものパターンで血管のトーヌスがさがり、血流が増える。そして血管透過性が亢進する。ん?どこかで聞いた話ですね。そして白血球の組織浸潤!白血球が血管内皮に取りつくためにはE-selectin, I-CAM1, V-CAM1などの発現が必要ですがこれは肥満細胞から放出されたTNF-αがもたらします。そしてこれら一連の炎症は白血球が尿酸ナトリウム結晶と接触、活性化されることによりさらに増強される。おそらくこの白血球による悪循環を抑制するのがコルヒチンなのでしょう。さらにC5a等の補体系、S100タンパク、IL-8などがからんで、白血球の動員が促進されていくこととなります。コストの面から全く適応はありませんが、理論的には分子標的薬やシベレスタットが痛風に効く可能性があると考えられます()。では白血球の動員のあとどんな因子が局所炎症を増強してゆくのか?ここにもT0ll-like receptorが絡んでいるらしい。局所の関節炎が進むとともにその周囲や全般的な急性期炎症を増強していくこととなる。補体はというと普段は関節内にはあまりいないらしい。ところが痛風発作中の関節内は補体活性が著しく上がってくるとのこと。古典的経路、副経路ともに活性化されるようです。面白いのは古典的経路の活性化には一般的に免疫グロブリンの介在が必要なのに、痛風においてはグロブリンがなくても直接C1が活性化されること。また活性化に伴い、C3も活性化し、これがリガンドとなって白血球が取り付きIL-8産生を促し、炎症部位への好中球遊走を促進することとなる。キニノーゲンとその分解産物であるブラジキニンも尿酸ナトリウム結晶に対する炎症を助長する因子として重要とのこと。ブラジキニンは結晶上でキニニーゲンから産生され、血管内皮細胞を活性化し、血管拡張をきたすとともに血管透過性およびアラキドン酸の分解を亢進する。ブラジキニンは痛覚神経終末を刺激し疼痛を発生させる。またアラキドン酸分解によって生じたプロスタグランジンはこの疼痛閾値をさらに下げることとなる。また非ミエリン神経線維は刺激を受けるとサブスタンスPを放出するが、これも血管拡張、血漿流出、白血球誘導、好塩基球脱顆粒、プロスタグランジンやサイトカインを放出する。これも局所炎症、疼痛の増強に重要だそうです。

その後は細胞レベルでの炎症増強が中心。尿酸ナトリウム結晶はオプソニン効果により被食作用が増強します。CR3Fcγなど多くの好中球表面受容体が結晶との結合に関与し、以降好中球からメディエータが放出され、血管拡張、発赤、疼痛がもたらされます。同時にスーパーオキサイド、過酸化水素、一重項酸素等の活性酸素種も産生されます。この食作用に引き続き、単球が活性化され、私たちのよく知る炎症性サイトカイン、IL-1, TNF-α, IL-6, IL-8が産生されるとともにCOX-2も産生されると。上記を考えるとやはり、好中球の作用を抑制し、炎症が大火事となる前に押さえこむのがコルヒチン、火事が大きくなったときにCOX-2を阻害して押さえ込もうとするのがNSAIDsと理解できます。

では急性発作はどのように消退していくのでしょうか?一つは関節内の問題。アポリポ蛋白BおよびE。痛風による急性関節発作では関節液内の蛋白濃度が低下しています。コーティングが薄くなれば、好中球がより結晶に結合しやすくなります。炎症の消退過程で前述のリポ蛋白が関節液に増えてくると、好中球の脱顆粒を抑制します。次にACTH1-39などのメラノコルチン。そしてPPAR-γ、単球の食作用を抑制するとともに、さまざまな炎症性サイトカインの発現を抑制するようです。またPPAR-γのリガンドはCD36の表面受容体をもつ単球への分化を促進、これが死滅した好中球の除去に役立つようです。そしてこの単球の分化が急性発作終息にも関与しているとのこと。単球は幼弱マクロファージを経て成熟マクロファージへと分化していきますが、前2者はTNF-α, IL-1, IL-6などの炎症性サイトカインやPGなどを産生し、後者は抗炎症性サイトカインであるTGF-βを産生するようです。したがって単球から成熟マクロファージへの分化が炎症相から抗炎症相への転換につながることが推察できます。このように痛風の短期自然史には接着分子と白血球誘導から細胞分化まで、複雑な病態生理がからんでいるのは非常に興味深いところと思われます。

 

なぜこの論文に目をとおしたのか?それは15年ぶりに上記の病態が突発したからです。

それも4月の終わりに起こり、今年の大型連休はロキソニンとずっと一緒。プチ山歩きもできませんでした。言い訳をするわけではありませんが、そんなに暴飲暴食をしたわけではありません。やはり混み合った地下鉄通勤が、本来田舎ものである私にとってストレスだったのか?5月の半ばまでひきづりました。5月半ばの東京での研究会(のあとの立石詣で)と同末の福岡での麻酔科学会(と屋台での情報交換会)。その後も思い当たる節があります。そういえばまだ左足には違和感があります。新たに好中球の遊走と未熟マクロファージの発現を抑止する必要性があるとおもわれます。

 分化誘導療法は臨床血液学では当たり前となっているそうです。ほうれん草には顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子が多く含まれ、白血球の分化にも関与する可能性があるとの説もあります。とりあえずビールのあては、ほうれん草のおひたしでと思います。

                  

平田 学



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