2022年01月03日
疲労しないヒーロー
自然免疫システムは日夜私達の体中をパトロールし、病原体や腫瘍などのよそものを
見つけると、インターフェロンという武器を用い退治してくれているらしい。こう考えると、組織実習で描いていたマクロファージや好中球が愛おしく思われます。ただSARS-COV-2はこの自然免疫に伴うインターフェロン放出を抑制する機能を有するかもしれないとのこと。特に高齢者でこの傾向が強いとも聞いています。これが高齢者の易感染性や重症化リスクに直ちにつながるとは思いませんが、非常に興味深いところです。またこれもうわさの域を脱さないのですが、日本においては季節性コロナウィルスへの暴露が強く、これによってSARS-COV-2に交差耐性を生じ、全体の波が小さく抑えられたとの話もあります。
オミクロン株の市中感染が認められてから2週間近くになります。もし人流が感染のブースーターとなるなら、クリスマス前より活発化していたわけで、そろそろ欧米のように
指数関数的な感染爆発が起こるはず。もし、以降も低水準で推移するなら、今度こそ科学的アプローチをお願いしたいと思います。血清インターフェロン濃度が自然免疫能をパラレルに反映するかどうかは自信がありませんが、一度サンプル調査をしていただけないものでしょうか?また海外と比較していただけないものでしょうか?
私達の自然免疫は疲れも知らず、毎日戦い続けているはずです。まさしくヒーローです。
しかしながらお正月はそのヒーローを苦しめる過剰カロリー摂取が立ちはだかっています。
何とか暴飲暴食でヒーローを疲れさせぬよう頑張ります。あくまで努力ベースですが。
平田 学
2022年01月02日
stress or non-stress?
麻酔管理において尿量はあまり気にされなくなったような気がします。ICUの患者さんでは、やれ6時間尿量からするとKDIGO AKI stage1になったと、結構過敏だったりするのに、不思議です。麻酔中は循環パラメータが問題なければ、0.5ml/kg/hの尿量でもしばらく容認している感があります。確かに、麻酔管理中は腎のエネルギーバランスは覚醒時に比べかなり低減しており、問題は少ないと考えますが、この尿量の低下した患者さんの中に、本物の尿細管障害例が含まれてはいないでしょうか?The furosemide stress test: current use and future potential というRENAL FAILUREのレビューを飛ばし読みしながら考えてみました。
renal AKIとprerenal AKIを鑑別するなら王道としてFENaを測ればということになるが、術中にこれを計測するのはなかなか煩雑です。また即時性がないため、腎性と診断できた時にはもう出来上がっているかもしれません。上記論文では、尿細管障害の判別のため、
1mg/kgと比較的大量のフロセミドを静脈投与し、2時間尿量で尿細管障害の有無を鑑別しています。フロセミドは尿細管細胞から分泌され管腔側にあるNak2CL共輸送体に結合し、Na・CLの再吸収を阻害し、利尿作用を発揮します。尿細管障害があれば、これが障害されフロセミドの反応性が悪くなるという仕組みと考えられます。非常に単純で私向きです。ただしフロセミドは血中ではほぼアルブミンと結合しているため、低アルブミン血症では担体によって血中から尿細管細胞に運ばれず、見た目の反応性が悪く(血中アルブミン濃度でフロセミド投与量を補正する必要?) なります。ネフローゼ症候群でフロセミドの反応が悪くなる大きな要因はこれです。
麻酔管理中、いわゆる乏尿となった場合、フロセミドストレステストは有用かもしれません。ただし管理中の他の薬剤との相互作用(おそらくほぼ相加的)を考慮すると、1mg/kgは多く、感覚的には0.5mg/kgほどで良いのかもしれません。ただし落とし穴が一つあります。それは私達麻酔科医の”フロセミド嫌いがちあるある”の要因なのですが、いわゆるハイポボレミアの状況下でこれを行うと腎前性要因を増悪させてしまう可能性が高い点です。すなわちこのテストはほぼノルモボレミアの状態下に行う必要性があるということです。これには動的パラメータを用いるのが適切と考えます。PPVやSVVが代表ですが、覚醒下の患者さんには向きません。私達に有利なのは、全身麻酔下人工呼吸管理中が多いという点です。
上記の動的パラメータを用い、ハイポにしないようテストを行うのが安全と考えます。
術中の尿量確保にはカルペリチド一点張りとの意見も聞きますが、これは糸球体機序に基づくもの。尿細管障害がある場合は、かえって負荷をかける可能性があると思われます。術中に正しく診断し、利尿薬を使い分けることも麻酔科医には必要なのでしょう。
たまに夜中に働かされておりますが、これもある意味ストレステストでしょうか?
それともたまにと感じるのはストレスレスだからでしょうか?
平田 学
平田 学
2021年12月31日
クリスマスプレゼント
da Vinci Xiです。
前世代の機種に比べ、一回りコンパクトに見えます。3月の終わりから稼働予定です。
私達、麻酔科医にはストレスフルな管理となることも多いのですが、侵襲軽減は患者さんに利益をもたらすため、可能な限りの稼働を実現したいと思います。またXiは今後のバージョンアップにも対応可能な機種とのこと。期待しております。
今年も気づけば大晦日、引き続きのコロナ禍ではありましたが、今年もクラスターを生じることなく、新年を迎えられるのが、最大のプレゼントです。手術室も閉じることはありませんでした。
関係者の皆様ご苦労さまでした。
平田 学