2013年09月23日

セミナーとシャンパン

  健康に気を配っているような記事を書きましたが、宴会日は全く別の話です。コミュニケーションを大事にする私はたいてい午前様となります。あまりにいつものことなので相方からは「5時までには帰ってきなさい」と言われています。あれ?これは小学生の時に聞いたフレーズ。「5時までには帰ってきなさい暗くなる前に」とよく母親に言われたのを覚えています。でもいつも7時前、暗くなってから恐る恐る「ただいま」でした。ということはに似たような警告句でも現在の不良おじさんに発せられるフレーズはご近所さんのてまえ「明るくなるから5時までには帰ってきなさい」でしょうか?土曜の深夜は3時の帰宅でしたので軽々条件はクリアしました。
 同日朝は気合をいれて8時に起床しました。宴会で遅くなった翌日は必ず家族の機嫌をとるようにしています。歩いて15分ほどのところに"eight"というパン屋さんがあります。ハード系のパンで種類も豊富、大人向けのパンです。パンチはもちろん効いており、やや塩分が多めの(私の感想)感じ。僕はこれを昼飲み(もちろん休日)のあてにすることが多く、オリーブ入りのパンがおすすめです。このパンのおかげで相方の機嫌も”so-so"でした。

 昼からはChanpan-Kyotoに参加しました。やっぱり酒の話かよと思われがちですが残念ながら違います。Changing Practice of Anesthesia (2013 in Kyoto)の略、朝から超音波ガイド神経ブロックハンズオンセミナー、
昼からDifficult Airway  Management、JB-pot プレテスト、PKからみた麻酔薬、筋弛緩薬の使い方と試験を意識しつつ一般臨床にも活かせる内容の講義で構成されていました。残念ながら朝のハンズオンは定員制なので参加できませんでしたが、午後から専攻医とともに参加しました。私達麻酔科医にとっていつも最大の難敵となる困難気道、挿管困難に対する管理についてH医科大学のS先生が非常にstrategicにお話しになりました。滑舌の良いお話し方で非常に聞きやすいという印象でした。そしてF医科大学N先生のJB-pot pretest。恥ずかしながら私事ですが、昨年JB-pot試験を受け見事撃沈しました。その対策として今回はこのpretestが今回のセミナー参加の主動機でした。私の印象ですがN先生はうちの伊達男Y先生と似た感じの男前。話方もスマートで非常にわかりやすいレクチャーでした。JB-pot関連の講義を全項目でN先生にしていただければ当院も合格者が飛躍的に増えるのではないでしょうか?この講義のおかげで私のJB-pot試験に対する意気込みは"きっとうまくいく"
というpositiveなものとなりました。最後の講義は以前からお世話になっているF大学のS教授。効果部位でのレミフェンタニル、フェンタニル、ロクロニウム等の推定濃度を用いた麻酔管理について電子チャートをしめしながら解説なさった。これにより効果遷延による麻酔時間の延長が防止されかつ安全性も向上するという。特に研修医の先生の麻酔管理指標として有用であると。なるほど当院の電子チャートにおいても機種は違うが麻酔管理中の筋弛緩薬や麻薬の推定効果部位濃度計算ができます。実際に使用はしてはいるがF大学程重要視してこなかったのは事実です。もちろん理論式に基づいた推定値であるためあてはまりにくい例も存在するであろうが、当院でもさらに応用してゆく必要性があると考えます。
 質疑応答では座長のS教授からvariationにたいしてBISなどを用いて補正できないかとの質問。F大学S教授は細かい指標を応用していけば補正可能で、将来的には自動麻酔が可能になるのではないかとのご回答。これを聞いて私はあるものをイメージしました。太平洋間を飛んで行く航空機です。関西空港を出てサンフランシスコ国際空港に向かうUA886便を例にとって説明しましょう。同便は日本時間11;15に関西空港を出発します。関空には2本の滑走路があります。滑走路の端には番号がかかれていますがこれは進行方向の方位を示します。北向き右側の滑走路は06R。今日の関西空港の風向きは北東ですから同便は06Rを北東向きに離陸滑走してゆく可能性が高いと思われます。離陸直後大阪湾上空に達しますがその先には伊丹空港の管理域、さらにその西には神戸空港の管理域がありますから、おそらく左旋回をはじめ明石海峡大橋、次に淡路島を前方に見ながら高度を上げて左旋回を続け、ほぼ1周近く旋回した後KIXを上空を通過以降東よりにほぼ直進し、所沢の東京管制を左に認識した後太平洋にでます。この時の高度はすでに1万メートルを超えています。以前は以降慣性航法を取ることが多かったようです。慣性航法とは少し難しい話ですが、加速度計を順次積分することによって速度を、速度を積分することにより距離を、レザージャイロを用いることにより方位を求め、基本的には外部の支援装置なしで計算上の位置、速度をもとに飛行していく航法と理解しています。理論上は成田-ニューヨーク間のクルージングでも5kmほどの誤差しか生じないと書いてあったように思います。ただ昨今ではこの5キロの誤差でも時間や燃料のロスになるため、またさらなる安全性向上のためもちろんこまめにGPSデータによる修正を行っているそうです。さてUA886便も大陸に近づきバンクバー島の山々が左手に見えるようになると高度を下げだします。サンフランシスコ国際空港の管理域に入り誘導を受けます。金門橋、ダウンタウンを左手に見た後ベイブリッジのわきを超えれば滑走路がはっきり視認できるようになると思います。以降は計器着陸に移ります。滑走路端には誘導電波を発射し計器誘導を行うローカライザー(水平方向)、グライドパス(垂直方向)がありこれをキャッチしながら航空機は最終着陸進入をしてゆきます(ILS機器を備えず目視のみでアプローチしなければならない滑走路ももちろんあります)。ついに多様なデバイスに補助されSFO-runway 28Rに着陸できました。ちなみに着陸直前に滑走路端に見える赤と白の表示灯は着陸進入角度の適正度を表示する進入角表示灯、PAPI(Precision Approach Path Indicator )というもので赤2白2なら適正です。
 かなり脱線してしまいましたが、上記の慣性航法が"推定効果部位濃度指向型麻酔管理"にあたり、BISや筋弛緩モニタリングによる補正がGPS等による補正に相当すると個人的には思います。麻酔管理と航法管理の類似点として興味深い点を申し上げておきましょう。有人航空機は現時点では自動で離陸はできないと聞いています。麻酔管理は技術が進歩すれば維持に関しては自動化できる可能性はありますが、麻酔管理というより気道管理という側面が強いですが、気管挿管や抜管は安易には自動化できないと思います。意義深いことはこの点に注目するならS先生の講義してくださったDifficult Airway Managementが将来においてももちろんその重要性を失うことはないという点です。
 さてF大学S教授のスライドに昨年の同医局でのボジョレーヌーボーパーティーのシーンがありました。医局員の先生方の真ん中に巨大な樽ワインがでんと存在しており度胆を抜かれました。思わず私達の医局員もテンションがあがりセミナー後の懇親会で「今年はぜひ参加させてください」と他流試合を申しいれる声があがりました。楽しそうですね。専攻医2年目のY先生、彼は優秀で出身高校は京都で飛ぶ鳥をおとす勢いの、というより飛ぶ鳥をすでに落としているR南高校。見るからに秀才風貌。しかし面白いのはお酒のこととなると酒神バッカスに大変身。樽ワインを見るなり「いいなー」「いいなー」を連発、ビールではなく完全に今年のボジョレーヌーボーに酔っている様子でした。
 champanとのお題目だったので少し期待しましたがこれはありませんでした。・・・こんなん書いたらおこられるな!お酒の話でしめていまいますがどうぞご愛嬌とお許しください。

    ワインの秋はしっかり堪能するつもりの麻酔科医      平田学

  

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2013年09月22日

お金に変えられぬ価値

  3連休です。医局員?のみんなに悪いのですが私は3連休です。しかし3連休前からお付き合い?がありました。まず金曜日は19:30から救命センターICUの1周年記念パーティー。前回の記事にも書きましたが、同ICUが開設されて1周年だという意味ではなく、再編成後1年たったよという意味。場所は当科前部長の送別会にも使った八坂の某所。雰囲気も良いが前回の評判と同様料理が良かった。フレンチ風で味付けもあっさり、コースでリズムもメロディーもよくしゃれているといった感じ。お酒が入るとI-副院長、T救急部長、T心臓血管外科部長との話も弾み、いつものとおり病院の未来像についての熱い議論が始まります。ただ悲しいかないつも結論は出ません。お酒が進むにつれまずでてくる症候群は「まわれメリーゴランド症候群」。不思議と10分サイクル、同じ内容でディスカッションが膨らみ結論が出かかるが、その頃になると各員が最初の前提を忘れていまい、「で何だったっけ?」でリセット、次のサイクルが始まる。そのうち会話の双方向性は失われ「会議は踊る症候群」に陥る。私も含めそれぞれ、発言者は好き勝手な方向性にすすみ議論が全くかみ合わない。こうなるとお酒が入ってなければ普通だれかが怒り出すのであるが、お酒の力は偉大で、みんな自分の主張に酔っており、意見が各自に受け入れられたと完全に錯覚し全く満足そうです。そして「議論のサラダ」状態となり幕を閉じます。
 他の人たちはというと各自めいめい話に花が咲いており楽しそうな宴会となっていました。救命センターICUにとって何せすばらしいのはこの一年大きなな問題もなく これたこと。この要因はもちろんスタッフの努力、それを取りまとめた管理職の献身、当直業務を含め実診療に貢献した救命センター所属の各医師(救命センター所属ではなくても当直をしている先生もいる)、T副部長とT部長。そして手前味噌ではあるが、日勤帯をコントロールしてきたうちの医局員に負うところがおおきいと思われます。今後も多部門がしっかりとコミュニケーション(ノミニケーションを含め)をとりながらアグレッシブにセンター業務をすすめていく必要性があるでしょう。

 3連休をとっているなぞと書くと、他の先生に「先生のところは人がたくさんいていいね」 と必ずいわれます。全くそのとおりですが、これは当医局のスタッフや前任、前々任の部長が勝ち取り守ってきたもので、私としてはこの労務環境の良さは最も守っていく必要のあるものと考えています。
 よく「転職、麻酔科 医募集。年収3000万」というような広告をみます。これって本当に得ですか?その職務環境にもよるでしょう。残業が少なく、業務にやりがいがあるなら魅力的です。しかしうわさの域をでないところではありますがこういった例では、非常識なほどの拘束時間の上他の部門とのコミュニケーションがはかれないケースが大半で、よっぽど個人が強くないとやっていけないのが実情でしょう。まあひとそれぞれの考えはあるでしょう。ただ私の医局では整備された労務環境にこそ最上の付加価値があると(お金には変えられない価値があると)考える者が主流派でしょう。もちろん少し無理をしてでも経験を積みたい3、4年目は若干スタンスが違うでしょうが、彼らがあまりにオバーワークになって体調を崩さないように調整管理するのももちろん私の責務でしょう。
 私も10年ほど前は週に2回程度の当直をしながらそれと同じ数のオンコールをこなしていました。ノン-デューティー の日も長時間で気を使う麻酔管理をするのが常でした(CABGの後連絡時でAAAの麻酔管理をすることなどざらでした)。若かったので耐えられたのでしょうが、ときに体調を崩すこともありました。これを自分たちがやってきたんだから君たちも少しは我慢しなさいと押し付けることができますか?現在当直翌日は朝の業務補助を行ったあとは帰宅、オンコールに関しても深夜1時をまわるような場合は翌日の日常業務は免除し、自宅待機としています。これは医局員の健康に気を配ると同時に、当直明けや深夜業務明けのクオリティーの下がった状態で麻酔管理を患者さんのためしないというポリシーからです(現状では患者さんは当直明けだからといってその麻酔管理を断ることができないのが実情)。もちろん朝から通常の麻酔管理に加え多発緊急手術(同時に3件以上、これを私達は本丸炎上と呼んでいる)による麻酔管理を依頼されれば非常事態宣言となり話は別です。
  私もそういえば50歳が見えてきました。まだ子供も独立したわけではありません。いままでさんざん苦労を掛けてきた家族のためにはあと少なくとも15年はがんばらなければならないでしょう。 よく「医者は短命だから太く短くでいいんだよ」と仕事でも遊びでも無茶をする人がいますがどうでしょうか?統計学的にも医師は短命であることは立証されているそうですが、私としてはこのような"命を削って使命を全うする"というやり方には組したくありません。自分が健康なことで職務をふくめ自分がしたいことができるなら、また家族と楽しく過ごしていける時間をより長くできるなら、より長く社会に貢献できるなら臆病者といわれようともオーバーワークは避けたいし、部下にもそれを避けさせたいと思います。
 私達の施設では院内ICUがサージカルICUの役割を担っておりそこを麻酔科が管理しています。まあ部内でもいろいろな考えがあるでしょうが、私がもしここを管理する意義はなんですか?と聞かれたならば理由は2つ。患者さんにとっての最良の医療のため、もうひとつは主治医の負担を減らすため。同ICUは私個人的にはsemi-closed ICUだと考えています。主治医の意見もICU専従医の意見も反映できそれらを折衷調整し、方針決定できる。従って管理業務に関して当たり前だが、コンセンサスが得られた状態で、主治医不在でも治療をすすめることができます。ここが味噌だと思います。私には真似できませんが、外科医たちは"命を削って"手術をしている。もちろん手術が好きだからしているのではありますが、術後ICUにきたときにはふらふら。この人たちにさらにあれ指示してこれ指示してとは言いにくい。それこそ上述の話ではないがふらふらの外科医たちの後ろには家で待っている家族の姿が映っているわけです。早く帰してあげたいと思うのが心情でしょう?外科医は確かに手術してなんぼ。そうであればそのクオリティーをあげるため他の部分はサポートしてあげたい。こちらも人間なので、たまには手術時間が長くなってイライラすることはありますが、僕たちがサポートすることで彼らが切磋琢磨できるならお安い御用と思います。
 心臓血管外科のK先生、元気なのは知っています。だから臨時手術がないときくらい、深夜焼肉なぞせずおうちに帰って7時間ほどぐっすりねなさい。体をこわさないように!

                                    早寝早起き麻酔科医  平田学
  

mh5963ya at 04:09|PermalinkComments(0)

2013年09月20日

金曜抄読会

  今朝は金曜日医局会恒例の抄読会がありました。可能な限り週1回程行っています。専攻医2年目のM先生の発表;Yiquan WらのThe Analgesic Efficacy of Subcostal Transversus Abdominal Plane Block Compared with Thoracic epidural Analgesia and Intravenous Opioid Analgesia After Radical Gastrectomy 。胃切除手術時、鎮痛法として硬膜外麻酔、肋骨弓下腹横筋膜面ブロック、麻薬の静脈内投与をそれぞれ選択し、全身麻酔と併用した場合それらの術後鎮痛効果についてどれぐらいの差がでるかを調べた論文。術翌日であれば同ブロックもそれほど硬膜外麻酔に比し劣ってはいないとの内容を含んでいました。発表後の質疑応答時、手術直前のブロックでは局所麻酔薬の半減期を考えると術後鎮痛期間が短くなる可能性について指摘され、これに対しM先生よりブロックを術直前と直後の2回にわけて行う方法もあるとの回答がありました。ただ複数回のブロックは局所麻酔中毒の危険性を増すためその適応、用量については検討が必要であり、今後文献的考察を含め課題とすることとしました。
 
 本日は救命センターICUの1周年記念パーティーがあり、O先生、Y先生とともに参加するつもりです。1周年というとかなり歴史が浅いように 見えますが、センターICUとしての歴史は1999年からの14年だったと思われます。昨年9月に院内ICUが開設されたためその際にセンターICUの体制も変わり、再出発の形となったため1周年なのだと理解しています。これは余談ですが、両ICUの前身のICU立ち上げおよび成長に貢献されたのが私の師匠の一人(すみません勝手にそう思っています)のS先生だった。現在のセンターICUは症例の重症化がかなり進んでいると思われます。救急経由であれば、IABPやPCPSを装着したAMI、超緊急手術が必要な急性大動脈解離、急性血液浄化が必要なAKIなどを受け入れます。その現状を考えるとそれらのデバイスにも慣れている私達麻酔科医、集中治療医の役割が重要となってくると思われます。
 今晩はいつもお世話になっているセンターICUのスッタフの皆さんをねぎらいたいと思います。

 さて今後も専門医取得に向けてのカリキュラム等を充実させていきたいと思いますが、現在考慮中のコースは
①春秋コース(6か月コース) 麻酔科専門医申請時の症例経験特に産科症例経験のためのコース
②春夏秋冬コース(1年コース) 専門医取得に向けた麻酔全般、集中治療研修状況によっては心臓麻酔
③キャリアコース  麻酔専門医取得後手術室管理業務や指導を習得されたい場合
 救急専門医取得を希望されるかたは救命センターでの研修を条件により行い得ます。
 もし興味をお持ちの方は075-561-1121(当院代表)までご連絡いただき麻酔科平田までつないでいただければありがたいと思います。

    麻酔科 平田学
 

mh5963ya at 16:04|PermalinkComments(0)