丹後にて思うこと プログラム

2014年06月24日

  抄読会ー6月後半

 今週の医局会での抄読会は専攻医1年目のI先生による”The Injection of Intrathecal Normal Saline Reduces the Severity of Postdural Puncture Headache”で少し古いですが、Regional  Anesthesia and Pain Medicineからでした。彼がこれを選んだ理由は研修医時代にPDPHを経験し、その対応に苦慮したからとのことでした。

 accidentalに硬膜穿刺となった産科症例中心の54例のうち、くも膜下に生理食塩水10mlを投与した群28例としなかったコントロール群26例を比較。前者のうち22例は硬膜穿刺となった直後のその針を通して生食を注入し、残りの6例は硬膜外針ごしにカテーテルをくも膜下に挿入した後、10mlの生食を注入。生食注入群のほうが後頭痛が少なく、また、経くも膜下カテーテル生食注入群6例には一例も頭痛は起こらなかったとのこと。

 この論文は古い論文であり、群設定等かなり危ういところがある。硬膜穿刺時の神経症状の有無についても記載がない。仮に放散痛などを呈したとしてその直後に、果たして生食とはいっても注入する気になるでしょうか?またたかだか10mlのボリュームでその後も穿刺孔から漏れ出て行くであろうCSF流出量をカバーすることができるのでしょうか?

 PDPHは予防も大切であるが、起こってしまってからの対応こそ重要と考えます。症例としては帝王切開が多いと思います。たいてい術後1日目、座位を取った後、歩行テストをするあたりから出現してくることが多いという印象です。安静にさせるというのも手段ですが、褥婦なのでvenous-thromboembolism(VTE)のハイリスクで、そのバランスをとるのが難しいと思われます。教科書とおりだいたい2週間でおさまることがほとんどですが、眼症状を併発する場合は、長期化するような印象です。当科での治療は経口可能ならカフェイン補充、経口水分補給を第一選択としています。ただ症状が強ければ、経口は困難なことが多く、その場合は輸液負荷を行います。理論的には脱水経口となる就眠時に対応し就眠前に負荷するのが良いと考えますが、これは利尿を招き、トイレに立つことにより、頭痛を増悪させる可能性があります。私は起床後、座位をとるまでの時間を2時間ほど取ってもらい、その間に補液を行う様にしています。これと同時に鎮痛薬も処方します。アセトアミノフェンが有用で、落ち着くまでは定期内服としています。

症状軽快はたいてい1週間程です。患者さんに言わせるとある朝突然霧が晴れるように軽快するとのこと。重症例は年に56例だと思われますが、その大部分は帝王切開例。ややこしくなりやすいのは金曜日に穿刺が行われた後、土曜から日曜にかけてPDPHが起こってくるケース。麻酔科のフォローが手薄になるとともに、病棟も休日体制となるので、症状を拾いにくい上、麻酔科側への情報伝達も不十分となるケースがあります。そうすると対策が後手にまわってしまう可能性があります。こうなると多くの患者さんから不満の声があがることになります。ただそういったケースで、クレームの主因は頭痛自体による苦痛の増強というより、症状出現早期の説明がないことによる不安の増強であることが多いようです。従って症状を生じた休日内で、私達のだれかが、見通し等について丁寧に説明を行うこと、またその後のフォローを十分に行うことにより、かなりクレームは回避できると考えます。

  当科では、土曜日、日曜日にもオンコール、院内ICU宿当直者を統括する責任担当を設定しており、その指導下に対策やICを行っていくようにシステム化しています。まだまだ当院では周術期チームの結成はままなりませんが、そのような方向性が学会を中心に一般的となってゆくと思われますので、術後管理に麻酔科も積極的に産科してゆかなければならないと考えています。もう穿刺後の頭痛は主治医任せでというような刺しっぱなしの姿勢では診療科として許されない時代になってくると思われます。

 

                         平田 学



mh5963ya at 06:17│Comments(0)

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