delsol di anestesia神無月の"神麻酔"をめざして

2014年11月05日

総喝

 夏休みは2学会参加とその準備であっという間に終わってしまい、周りからはもったいないといわれることもありました。しかし私にとっては、非常に有意義だったと思います。というのは救急医学会で学んだことと、臨床麻酔学会で学んだことがリンクしているように思えたからです。臨床麻酔学会のコピーはdiversityでしたが、私にとってはintegrationでした。両学会で得たものを総括し、今後の自己研鑽あるいは教育に活かして行かなければなりません。
 

 まず救急医学会で私が興味を持って聴いたのはアラーミンについて。その代表格はHMGB1だそうですが、こいつらはいつも悪玉として働いている訳ではないそうです。HMGB1は局所では止血や修復に関わっているそうです。ただ全身性に流出しまうと、MODSをひきおこすメディエータとなってしまうとのこと。言ってみれば諸刃の刃、あるいはジキルとハイドでしょうか。全身性の炎症を強引に抑えにかかれば、局所修復が遷延し、炎症が再燃する。また局所を優先した治療を行った場合、その治療環境を局所にとどめ得なければ、全身性にメディエータの流出をきたしてしまう。拮抗薬を開発しても単純に病態が制御できるわけではないことが想像できます。正と負のバランスを保ちながら両者を失効させてゆくような治療が理にかなっているのかもしれません。専門家ではもちろんないので、わかりませんが、炎症性および抗炎症性メディエータ双方とも除去できるような方法、私には血液浄化法しか思い着きませんが、が有効であってほしいと思います。

 ではなぜ局所にとどまっていればいいことをするものを、血中に流出させてしまうものは何なのでしょう。血管の最内層には内皮がある訳ですから、単純に考えれば内皮障害だと思います。血管内皮障害をきたす原因は何でしょう?感染?スーパーオキサイド?数えきれません。あたりまえですが、血管内皮障害を可及的早期に抑えることが肝なのでしょう。

 

 臨床麻酔科学会で印象に残ったのは上園先生のお話。ものすごく分かりやすい説明で、聴くだけで、GDTの何たるかが半分以上わかってしまいそう(少なくとも分かった気になってしまいます)です。強調されておられたのは、GDTの本質は安全にドライサイドにする輸液管理方法だとのことでした。そしてwetを避ける理由は過剰な輸液負荷は血管内皮の損傷をもたらす可能性があるからですという様な内容をお話しになったとき、あれここにも内皮障害が関係するのかと思いました。Restrictiveな輸液管理をするためにはその内容が重要となると思われますが、もしこれに膠質さらにHESを用いれば、全体に輸液過剰による内皮障害の抑制に役立つばかりでなく、HES自体のグリコカリックスに対する保護効果を中心とした内皮保護作用をも期待できるかもしれません。手術侵襲によりもたらされる生体反応は状況によってはsepsisと同じような病態となる可能性があると思われますが、この増悪にはもちろん血管内皮障害が関与していると思います。となれば、それを回避できる可能性のあるGDTを積極的に取り入れることにより、短期というよりは、中長期の予後を改善できる可能性があるのではないかと思えます。

この血管内皮保護という点において、救急医学会で得た知識と臨床麻酔科学会で得た知識がリンクしたように思えました。

 

GDTがうまくいった後の血管内皮を観察すると、グリコカリックスの障害は非GDT症例に比べやはり少ないのでしょうか?興味は尽きませんので、情報の収集にあたりたいと思います。

                       平田学



mh5963ya at 10:07│Comments(0)

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