2014年11月09日
神無月の"神麻酔"をめざして
今週の勉強会はY先生。”Perioperative Medicine Management”と題して、日ごろ私達が当日内服指示を悩む服用薬につき、参考論文を交え提示してくれました。
βブロッカー;継続、ただし周術期死亡を増やしたり、脳血管障害発症率が増えるという報告もあると。
スタチン;継続。しかしあまり海外ではその効能につき信頼を得ていないようと。
Caブロッカー;どちらでもよいと。ただしVSAに対して処方されている場合は継続。
ACE、ARB;継続と。但し一般的に言われているが、術中低血圧をきたす可能性はある。周術期の予後を考えると有利と。
利尿薬;継続
ジゴシン;どちらともいえない。
亜硝酸薬;非投与でもPMIのリスクを増やすという事実はないと。但しVSAに対し
処方されている場合は継続。
抗痙攣薬;継続
抗うつ薬;継続
SSRI;基本継続だが、術中出血量を増やす可能性があると
炭酸リチウム;継続
バルプロ酸、カルバマゼピン;継続
抗精神病薬;中断により、原疾患の増悪が予測される場合は継続
ただし、QT延長に注意。また突然死と関連があるといわれている。
ベンゾジアゼピン;継続
抗リウマチ薬;MTXは継続(生物学的製剤は海外では一部継続としているものもあるが、
基本中断)
喘息に対する吸入薬;継続
テオフィリン;当日は休薬
抗パーキンソン薬等については、今後まとめますとのこと。
個人的にはARB、ACEの拮抗薬がないので心配であるのが一つ。もう一つは開心術後で、縦隔に癒着をきたし、それによる拡張障害(絞扼といったほうがよいのかもしれないが)がベースにある症例では麻薬や麻酔薬による血管拡張に追随できず、急速補液で代償できない場合、カテコラミンの使用を要するケースがあります。その場合当日にβブロッカーが入っている場合、当然のことながら反応性が悪いケースがあります。さらにARB、ACEも投与されていると、カテコラミン不応性の遷延性低血圧をきたす場合があり得ます。従ってこのような症例への当日投薬については慎重に考慮すべきと考えます。
周術期投薬についてさらに習熟し、神麻酔を目指しましょう。
平田学