2014年06月
2014年06月30日
夕凪にスコール
先週は良く働いたような、良く飲んだような。昨今の晴れたかと思えば、豪雨という天気のような週後半でした。
当科の夜間体制は3枚です。ICU当直、手術室麻酔オンコールそして責任番。責任番は昼間のスーパーバイザーです。水曜は当直が私、オンコールが4月からオンコール時緊急手術的中率100%の3年目I先生。責任番はO先生でした。2人でこなせるものであれば、オンコールが麻酔担当、ICU当直はサポートに入ります。もし新生児手術や開心術の場合は、オンコールの対応が困難なら、管理の間は業務を交代します。従ってこの日は私がヘルツを担当する可能性もあったわけです。そしてオンコールは激引きのI先生、私の運命はきまったかのようでした。ところが、なんとICUも平和で、また深夜の緊急もなく、ゆっくり休めてしまいました。
木曜はF大学研修医の先生が見学にやってきてくれました。午前、ざっと手術室を案内した後、救命センターへ。ちょうどドクヘリがやってくるところだったので、救急科のT先生、I先生の計らいで、ヘリポートへ。ヘリ搬入の見学をさせていただきました。昼からは両ICUの見学、そして周産期センターを少し見させていただき終了となりました。
夕方からは四条へ繰り出し、見学の先生、I専攻医とともに、床で風情を楽しみました(見学の先生が京都風情をたのしみたいとのことでしたが、ほとんど私の希望です。今年の初床)。まだ明るいなか、鴨川べりを歩く人、ジョギングしている人、ハーモニカを吹いている人?その後ろには南座、そしてその奥北側にはぼんやりと赤みを帯びた比叡山。こんな近くなのに、これほどゆったりと時間が流れているところが存在したとは。全く休日の夕刻とこの平日の夕刻に鴨川が付帯する空気がここまで違うものなのか?感無量でした。風情は十分味わえたのですが、飲むほうは十分ではなかったので、しめにそば(もちろん沖縄そば)を食べながら泡盛を流しこみました。久ぶりに花酒の”どなん”をロックでいただき、心も喉もしびれました。
翌日は外来。知らないうちに初診枠をなぜか超えています。必死のパッチで病棟診を含め16時までに終了させました。夜は麻酔科研修医のお疲れ会。ホテル京阪のビアガーデンでしたが、今年は私と天候の相性が悪い。風が強く、途中からは寒いくらい。2次会は専攻医F先生セッティングの近傍のバーへ。12時前に帰宅の予定でしたが、飲みたらないという人が出現したため3次会へ。3時に帰宅、久しぶりの午前様となってしまいました。
土曜は2日酔い気味で10時まで寝坊。その後研修医の先生と締切間際の臨床麻酔学会の抄録添削行った後メールでやりとり。午後からは期限が翌々日と迫った救急専門医更新書類をまとめた後所用のため外出、帰宅は今夜も0時をまわりました。最終の抄録のチェック後、ブラジル戦をみながらメール返し。2時過ぎ就眠。
翌日曜は麻酔ABCコースを施行。これは次月麻酔科ローテの研修医の先生に主にワークショップ形式で、麻酔関連手技(麻酔器やモニターを含む)について学んでもらい、実践に役立てようとするもの。今回は新人を中心に手術室看護師も参加しました。その準備のため6時過ぎに起床。7時過ぎに、歩きで一駅先のスーパーに買い出し、合間につまんでいただくお菓子と飲み物を購入。9時からセッティング。10時には何とかコースがはじめられ、昼食をはさんで15時半まで。皆さん非常に熱心にかつ興味深く親しんでいただきました。終了後救急専門医の書類を同日中に発送しなければならないため、京都駅隣の中央郵便局へ。そして書類発送した後はABCの打ち上げに。さすがに疲れていたので8時前には退散、帰宅し早目に寝かしていただきました。
晴れ時々雷雨みたいな1週間でしたが、非常に充実しておりました。
平田 学
2014年06月24日
プログラム
昨日、当院の研修管理委員会が開催されました。前期研修の募集は減となり、少しさびしいところですが、現時点で興味の大きいのは後期研修募集についてですので、
小児科コース、救急科コース、外科コース、成育医療・産婦人科コース、麻酔・救急・集中治療コースに加え、総合内科コースが追加されました。2年の麻酔・救急・集中治療コース以外は3年コースです。麻酔・救急・集中治療コースが2年なのは府立医大の専門医研修プログラム(4年)のうち2年間のみ同一病院での研修を認めるとの規定との整合性をもたせるためです。以下に府立医大麻酔専門医プログラムに所属し、当院でのロテーションを希望される方の代表的なローテションを以下に示します。
第1年次 |
2年次 |
3年次 |
4年次 |
第一日赤 臨床麻酔基礎 産科麻酔 |
第一日赤 心臓麻酔、集中治療 |
他施設 |
他施設 |
第一日赤 臨床麻酔基礎 産科麻酔 |
他施設 |
第一日赤 心臓麻酔、集中治療 |
他施設 |
第一日赤 臨床麻酔基礎 産科麻酔 |
他施設 |
他施設 |
集中治療 |
他施設 |
第一日赤 心臓麻酔、産科麻酔 |
第一日赤 集中治療 |
他施設 |
他施設 |
第一日赤 心臓麻酔、産科麻酔 |
他施設 |
第一日赤 集中治療 |
他施設 |
他施設 |
第一日赤 心臓麻酔、産科麻酔 |
第一日赤 集中治療 |
今後、研修指定範囲に含まれる可能性や、専門医試験の出題項目に含まれていますので、ペインクリニックの研修は必要かと思われます。残念ながら現時点では、当科にはペインクリニックはないので、緩和医療を含めた形で府立医大での研修を予定しています。
また新生児麻酔につても当院での症例数は少なく、移植の麻酔は原則ありませんので、それらを希望する場合は府立医大での研修を原則したいと考えています。もし専門医取得後の研修を希望され、当科のスタッフをお考えの場合は、入職後1年目に、心臓麻酔を含め、近隣施設での短期研修あるいは週1回の研修を検討したいと考えています。
当科関連のスタッフ枠としては、現時点では麻酔科部枠が単独ですが、今後新設されるであろう集中治療部枠を含め、院内出向枠である、救急部枠や緩和ケア内科枠等が挙げられるでしょうが、当科関連に関する選考については、当院でのプログラム研修者を優先していきたいと考えています。
麻酔科をベースとしないが、集中治療の専門医を目指す方については、当院の他のプログラムからであっても当科関連部門での研修をサポートしますのでご相談ください。
府立医大専門医プログラムに所属する予定で、1年目に当院での研修を希望される方は当院の後期研修医採用試験を受験ください。詳しくは病院ホームページで。
なお応募期間は9/12までとなっています。
平田 学
抄読会ー6月後半
今週の医局会での抄読会は専攻医1年目のI先生による”The Injection of Intrathecal Normal Saline Reduces the Severity of Postdural Puncture Headache”で少し古いですが、Regional Anesthesia and Pain Medicineからでした。彼がこれを選んだ理由は研修医時代にPDPHを経験し、その対応に苦慮したからとのことでした。
accidentalに硬膜穿刺となった産科症例中心の54例のうち、くも膜下に生理食塩水10mlを投与した群28例としなかったコントロール群26例を比較。前者のうち22例は硬膜穿刺となった直後のその針を通して生食を注入し、残りの6例は硬膜外針ごしにカテーテルをくも膜下に挿入した後、10mlの生食を注入。生食注入群のほうが後頭痛が少なく、また、経くも膜下カテーテル生食注入群6例には一例も頭痛は起こらなかったとのこと。
この論文は古い論文であり、群設定等かなり危ういところがある。硬膜穿刺時の神経症状の有無についても記載がない。仮に放散痛などを呈したとしてその直後に、果たして生食とはいっても注入する気になるでしょうか?またたかだか10mlのボリュームでその後も穿刺孔から漏れ出て行くであろうCSF流出量をカバーすることができるのでしょうか?
PDPHは予防も大切であるが、起こってしまってからの対応こそ重要と考えます。症例としては帝王切開が多いと思います。たいてい術後1日目、座位を取った後、歩行テストをするあたりから出現してくることが多いという印象です。安静にさせるというのも手段ですが、褥婦なのでvenous-thromboembolism(VTE)のハイリスクで、そのバランスをとるのが難しいと思われます。教科書とおりだいたい2週間でおさまることがほとんどですが、眼症状を併発する場合は、長期化するような印象です。当科での治療は経口可能ならカフェイン補充、経口水分補給を第一選択としています。ただ症状が強ければ、経口は困難なことが多く、その場合は輸液負荷を行います。理論的には脱水経口となる就眠時に対応し就眠前に負荷するのが良いと考えますが、これは利尿を招き、トイレに立つことにより、頭痛を増悪させる可能性があります。私は起床後、座位をとるまでの時間を2時間ほど取ってもらい、その間に補液を行う様にしています。これと同時に鎮痛薬も処方します。アセトアミノフェンが有用で、落ち着くまでは定期内服としています。
症状軽快はたいてい1週間程です。患者さんに言わせるとある朝突然”霧が晴れるように”軽快するとのこと。重症例は年に5~6例だと思われますが、その大部分は帝王切開例。ややこしくなりやすいのは金曜日に穿刺が行われた後、土曜から日曜にかけてPDPHが起こってくるケース。麻酔科のフォローが手薄になるとともに、病棟も休日体制となるので、症状を拾いにくい上、麻酔科側への情報伝達も不十分となるケースがあります。そうすると対策が後手にまわってしまう可能性があります。こうなると多くの患者さんから不満の声があがることになります。ただそういったケースで、クレームの主因は頭痛自体による苦痛の増強というより、症状出現早期の説明がないことによる不安の増強であることが多いようです。従って症状を生じた休日内で、私達のだれかが、見通し等について丁寧に説明を行うこと、またその後のフォローを十分に行うことにより、かなりクレームは回避できると考えます。
当科では、土曜日、日曜日にもオンコール、院内ICU宿当直者を統括する責任担当を設定しており、その指導下に対策やICを行っていくようにシステム化しています。まだまだ当院では周術期チームの結成はままなりませんが、そのような方向性が学会を中心に一般的となってゆくと思われますので、術後管理に麻酔科も積極的に産科してゆかなければならないと考えています。もう穿刺後の頭痛は主治医任せでというような”刺しっぱなし”の姿勢では診療科として許されない時代になってくると思われます。
平田 学
2014年06月17日
丹後にて思うこと
さて昨晩は、本日の出張業務に備え、最終の舞鶴号で移動(風情あふれるディーゼルカーで、音が少々やかましいという方もおられますが、個人的には大好きです。綾部駅で切り離され2両ぽっちになってしまいますが、またそれが愛らしい)、前泊。いつも泊まっているホテルがいっぱいなので、違う施設に宿泊しました。先週の研修とコートジボアール戦敗戦のせいか疲れ果てておりますので、どこにも食べにでず、というより飲みにでずと言った方が正しいかもしれませんが、何せ外出しませんでした。12時には健康的に就眠し、翌朝は5時過ぎに起床いたしました。
こちらのT部長は元々当院で一緒に働いておりました。周知の仲です。先日の横浜の麻酔科学会の折も中華料理を共につつき、紹興酒を酌み交わしました。当院からは週の半分近くを支援しておりますが、なかなかそれでも忙しいと。同じ府内の日赤という関係はもちろん、北部医療を支えている中核病院として私達は尊敬しており、医局員みな、可能な限り支援を続けたいという考えで一致しています。支援というと大変おこがましい言い方かもしれませんが、私達自身にもメリットがあります。月に一度であっても、都市部で働いている私達が地域医療に参画するということは、重要な評価事項に今後なってゆくと思います。国としてはもちろん地域間格差を是正したいと考えているでしょうが、なかなか常勤レベルでの医師の都市部から地方へのシフトが進んでいかない。となれば少しでもこれを緩和しようとするならば、臨時でも地域医療に携わっている医師とそうでない医師を差別化しようとするのは至極当然と思われます。そのうち地域医療従事歴が重要となる時期がやってくると私は考えております。
地域の人材不足に少し言及しましたが、都市部には存在しないでしょうか?当院においても不足自体は生じます。曜日によって定期手術件数が異なり、多くなる日は、相対的に不足となることがあります。当院の手術室は10室で、1部屋を緊急手術対応様にあけています。従って中央手術室としては9部屋稼働。周産期センターには帝王切開用の手術室がありますが、経腟分娩兼用。また救急外来にも手術室がありますが、ここは状況により、使用できないこともあります。ですから実質10室で年間4000件を超える麻酔科管理を行っています。部屋運用としてはかつかつで、曜日によっては10室スタートや、非常にリスキーですが、11室スタートとなることもあります。フルスペックで対応してもかなり苦しいことがあります。実は助かっているのは研修に来ていただいている先生方。今春まで産婦人科医として当院で働いていたU先生、開業に備え、spinalを中心とした麻酔技術を復習したいとのことで週4来ていただいています。件数の多い日はU先生の存在が威力を発揮します。これはU先生、私達ともwin-winの関係と言えます。当院は総合周産期センターでもあるので、産科麻酔研修にはうってつけと考えます。以前は平日すべての日をカバーする研修に固執しておりましたが、U先生のケースを考えるとそうでもなく、2日、あるいは1日でも来ていただくだけで、お互いにメリットがあると思われます。
結局win-winの関係を作ることが、地方でも都市部でも肝要ということでしょうか?
平田 学
2014年06月15日
入道雲と緑稲
昨夕、研修から帰ってきました。湖西は田植え後で、比良山系が緑に生えていました。研修の中の講演は医療安全についてでしたが、私も時折、患者さんからクレームを受けることもあり、大変参考になりました。もちろん多数派だと思いますが、私のスタンスでは、クレームを受ける場合たいていの場合患者さんの不満には納得できるものがあるので、不満に思わせた、不快な思いをさせたという点についてはいち早く謝意を示すようにしています。これによって患者さん側から冷静な本音が出やすくなるという特徴があります。もし最初から”壁”を作ってしまうと以降のコミュニケーションに支障をきたし建設的な話し合いができなくなってしまいます。大事なのは話合いを通して問題点を共有し、医療者側で改善できる点は改善対策を作る。そしてそれを患者さん側に示すことで、フィードバックを行うことであると思います。麻酔科医というのはその職人気質の傾向?から困難なシチュエーションでのコミュニケーションがあまり得意でないケースが多く、それが建設的な意見交換を妨げてしまうこともあるように思います。私を含めて、もっともっと”冷静な大人”になるべきであると考えます。最終的には患者さん側にとっても医療者側にとっても今後にどう活かすかが重要かつ実りあることになる訳ですから、建設的な話し合いができる環境作りが両者にとって最も望ましいと考えます。よく医療者側 vs患者側といったように対立関係かのような表現を診ますが、患者さんは元来、絶対的な味方であると私は確信しています。上述の講演の内容にももちろん同様の話がありました。
24時間近い研修を終え、楽しみにしていた、北小松駅近くの”寿司正、レストランひろせ”へ。失礼な話ですが店内で”あたり”と言ってしまいました。並にしたのですが、ネタが新鮮かつ大きい。まぐろ、アナゴ、車鯛、ボタンエビ等々、身が締まっていて、甘味も強い。飾りの入れ方もしゃれている。思わず生ビ2杯飲んでしまいました。
帰りは湖西線の鈍行で、田んぼを見ながらゆっくり帰洛となりました。さて本日日曜日は5時に起床。雑用を済ませ、10時からの観戦に備えました。結果は・・・。よく頑張ってはいましたが、オシムが傍で見ていたら”ゲキオコ”だったでしょう。僕は素人ですが、日本のストロングポイントは早いパス回しではなく、俊敏性を備えた無尽蔵のスタミナだと思っていますので。本日は憂さ晴らしに、幸せな気分になれる牛肉を無尽蔵に食べたいと思います。
水無月の田んぼに涼む緑稲
平田学