2014年10月
2014年10月19日
Q factor
昨年の今頃は金沢で臨床麻酔学会が行われていました。JB-POTの試験が近かったので、行き帰りの電車のなかでも、周りの目をきにせず、なりふりかまわず問題集を解いていました(50前のおっさんなので記銘力低下がみられるのです)。最後の追い込みが肝心ですので、頑張ってください。僕の対策は非常に雑です。動画対策はユーチューブにアップされている動画で、試験にでそうなものを予想。ひたすら視聴を行い、目を慣らすようにしていました。
今週の抄読会はお休みで、今年の臨床麻酔学会の予演。F先生。丁寧に細かく調べており、感心しましたが、内容が豊富過ぎ、時間オーバー。聴いてもらいたいことにフォーカスし、削らないといけません。またO先生の指摘どおり、考察はもう少し、理路整然と行うべきでしょうか。また昨年に引き続き、研修医の先生にも発表していただく予定ですが、スローペースな私とK先生なので、こちらは現在作成中です。K先生の研修医という立場での自由な意見を取り入れ、ユニークな発表にしたいと考えています。
K先生は救急集中治療コースに入っていただく予定です。半年は救急集中治療が行えるベースの技術取得。可能ならPAカテ挿入、体外循環管理、(経食道)心エコーのための知識および基礎操作技術取得まで少しかじれたらと思っております。後半は腎臓内科のローテーション。この時期にICUで行かせる血液浄化法の基礎知識の習得および症例経験が可能と考えています。当院の腎臓内科は非常にアクティブで、急性血液浄化学会で話題となっていたセプザイリスを用いたRRTを積極的に導入してゆく予定と聞いています(もちろん同時に評価を行いつつですがと腎内N部長はおっしゃっていましたが)。今後も腎臓内科を含めた内科系診療科とは、総合診療との絡みもありますので、積極的にコラボしてゆきたいと考えています。
さて経食道エコーに関する話です。冷静に考え自分自身もあと5年もすれば、資格更新のための試験を受けなければならなくなるのは事実です。臨床に関連する知識については講演会、参考書等の資料から再構築できるとは思います。問題は基礎の部分です。そこで先週名古屋で行われていた、フィリップス主催の基礎セミナーに参加してきました。正直、教科書で基礎部分を読んでいるとナウゼリンが要りそうなほどのPSNV=peri-studying nausea and vomitingを感じますが、ひとの話を聴くとなるとこの抵抗がありませんでした。
講師の先生の説明もよかったのでしょう。いつもごっちゃになりイライラするQ factorもすんなり入ってきました。惜しむなくば、もう少し時間をかけていただければよかったという点です。是非とも関西でも行っていただきたいと思っております。
内向けの後期専攻医募集については締め切られましたが、外向けには追加があると思います。まだ進路を最終決定しておらず、救急や集中治療に興味がある方は平田までご連絡をいただけるか当院の人事課に問い合わせいただければと思っております。麻酔科のコースについては、府立医科大学のプログラムに属しています。但し後期研修1年次、2年次の研修を当科でご希望されるのであれば、同様に私か人事課にご連絡いただければ幸いと考えています。こちらも外向けには追加が可能と聞いています。
新しい管理棟ができ、医局もそちらに移りました。残念ながら旧医局からの東福寺の紅葉観覧はできなくなりました。しかし私としてはローソンが新しい場所に移り、広くそして引っ越し前には許可されていなかった”揚げ物”が販売されるようになったのが非常に大きいQ factor(このQはquality)であり、引っ越しの一番の成果であると思っています。
平田 学
2014年10月14日
3日遅れの勉強会報告
今週の勉強会はY先生でした。KJAからThe effects on Apgar scores and neonatal outcomes of switching from
a combination of phenylephrine and ephedrine to phenylephrine alone as a
prophylactic vasopressor during spinal anesthesia for cesarean section.
帝王切開時に使用される昇圧剤についてエフェドリンとフェリネフリンの併用とフェリネフリン単独使用のどちらがアプガースコアを改善するかを調べたもの。研究施設では前者から後者への移行したので、その前後で観察研究が行われています。私達がまだ若手であった頃は、α作用は子宮血流低下をきす可能性があり、帝王切開時はエフェドリン使用が優位でした。そして良く頻脈になっていました。術前ズファラジンが投与されていることもあり、そのような症例では術中心拍数は140回/分を超える例もあり、なかには心不全をきたす症例もありました。
少し話はそれますが、なぜ比較的心リスクの少ない妊婦に心不全をきたすことがあるのか、確かに140bpmの頻脈はしんどいのですが、これだけで簡単に生ずるのものなのかと不思議に思っていました。実はIUGRを伴いやすいため収縮抑制薬を投与される可能性のある妊娠高血圧症候群それ自体でも心抑制が生じていることがあるとわかってきたのが一つ。もう一つは高頻度ではないですが、妊娠高血圧症候群と時に症候が似る周産期心筋症(もちろん重症例や劇症例は鑑別がつくでしょうが、中等症以下では妊娠高血圧症候群と鑑別がつきにくいのではないかと思われますが)が含まれている可能性があること。妊娠前に心筋症が指摘されているものは、周術期の対策をとります。しかし無症候で分娩時に急激に悪くなるものも少数例あり、そのような例では無防備となります。このような症例の帝王切開時にPIHだと思って膠質中心の多め(PIHは血管内脱水傾向にあることが多いため)の輸液管理をすると容易に心不全をきたします。術後の経過が良く心機能が回復し(私達の知らないところで。そのような症例は文献上50から80%といわれていますがその後のストレスで再発する可能性は否定できません。従ってこのような例も本来循環器専門医のフォローを受けるべきと私は考えますが)少し入れ過ぎですか?と誤認識されるならましですが2割くらいの症例でこの後心機能が悪化する可能性があるそうです。当科では心機能低下例ではもちろんですが、重症PIHについても術中、術後の循環管理につき産科医と事前検討するよう心掛けており、また管理困難例については循環器科医のアドバイスを積極的に受けるようにしております。
話を元に戻します。さてこの論文の結論ですが、5分アプガースコアには有意差はありませんでしたが、1分は有意にフェニレフリン単独使用群が良好でした。その理由はY先生によると、α、β作用の優位性ではなく、作用発現時間の違いではないかとのこと。すなわちフェニレフリンのほうが作用発現が早く有利であったのではないかとのことでした。ということは術中低血圧の発生頻度ではなく持続時間が予後に関わる可能性もあるということになります。従って術中輸液を含めた低血圧予防策を統括的に再検討する必要性もあると私は考えます。
次回は先週土曜日に名古屋にてTEEの基礎知識に関する講義を受けてきましたので、その報告をしたいと考えています。
平田 学
2014年10月05日
残念
不思議に見える。今年の5月13日に御嶽の山体の直下、非常に浅い震源で地震で起こっているが、それ以降
御嶽の 真東で、浅層を震源とする地震が一か月に複数回あった。これはアメダスの地震情報からも明らかである。このあたりの地震と言えば、長野県西部地震が最近の大きな地震であるが、その震源は御嶽南方の断層でると思われる。すなわち、噴火前に起こっていた地震の震源とは位置が異なる。木曽谷は断層に面しているので、ここで地震がおこるのはわかるが、その西方すなわち御嶽の東の山裾の地震はいささか不思議な感じを受ける。いずれにせよこの領域で10kmにも満たない浅い震源で地震がおこり始めたのは2012年12月24日のことである。レトロに見ればこのような見かたができるのはあたり前といわれそうだが、ひっかかるのは御嶽山の東、木曽谷の西の領域には大した断層がないこと。5/13の山体直下、浅い震源の地震は何だったのだろうか?
有史以来噴火していない御嶽は1979年に噴火をおこした。私の愛知の実家からも噴煙が確認できたほどである。但しこのときは人的被害はなかった。その後も小規模噴火を2回きたしている。この経過からしても、私はもちろん専門家ではなく、そのような言葉を使うのは不適切と思うが、活火山化していたのではないか?専門家は活火山という言い方はしないようである。ということは存在する火山はすべてactiveなのだと思う。1万年も噴火がなく、50年内に3回も水蒸気爆発を起こしている火山がinactiveとは素人目にみても思えない。50人以上の方がなくなっているのを考慮すると、予算とかの問題ではないのではないか。少なくとも火口を観察できるリモートカメラがあればもう少し早く噴火の可能性を予期できたのではないのか?また噴火が起こっているということを即座に登山者に周知できたのではないか?しっかり検証すべきと思う。
私は臆病なほうで、いつも外出した際には避難路や避難場所を確認するようにしている。東日本大震災のときの津波は恐ろしいものだったが、気を付けなければならないのは離島での津波。機序が異なる可能性があるらしく、大規模岩盤が崩落して津波を起こす場合があるとのこと。その場合はあっという間に津波がやってくるはず。あらかじめ5階以上の建物を見つけておき、即座に避難する必要性があるのではないだろうか?
平田学
2014年10月04日
惜別の宴
今週の勉強会はO先生の担当。RSIに関し、複数の論文を提示しながら概要を概説されました。RSIに用いる筋弛緩薬は脱分極性のSCCがよいのかあるいは非脱分極性のロクロニウムがよいのか?またcricoid pressureは効果的かどうか?
O先生の意見としては、RCBに比しSCCの方が投与後の気道開存性がよくRSI時の酸素化には有利でないかとのことでした。またcricoid pressureについてはその正確性、食道閉鎖の確実性については疑わしい部分が多く、条件により施行すべきかどうかを決定すべきではないかとの意見でした。cricoid pressureについては、わたしも同じ意見ですが、筋弛緩薬についてはどうでしょうか?SCCの場合fasciculationを生じてから呼吸停止までの時間は短くそれも急激であるような印象です。一方RCBは効きはじめてから次第に一回換気量が減ってゆき、呼吸停止となるような印象です。主観的意見の域を出ませんが、筋弛緩薬投与から呼吸停止するまでの総換気量は、一時的に一回換気量はSCCの方が増えるとはいえ、RCBのほうが多いような印象があります。酸素化という点については、必ずしもSCCが有利であるとは言えないような気が私はします。
昨日でローテーターの二人のO先生は終了です。片方の小学生みたいなO先生は天真爛漫。少し”きたえがい”がありました。一昨日の飲み会で彼が暴露していましたが、私がスーパーバイザーのときの症例検討会はかなり緊張したとのこと。ただよく勉強してきました。フロートラックを含め循環管理が大好きな彼は、みんながあまり好きでない長時間手術を好んで志願していました。是非とも来年度もICUあるいは手術室麻酔どちらでも構いませんし、選択してもらいたいと思います。もう一人のO先生は物静かですが、真面目なタイプでいかにも内科タイプという感じでした。彼もよく勉強していました。
修了の会はI専攻医プロデュースのおしゃれな町家居酒屋。五京阪条東の五条通り添いにこんな店あったけという感じでした。はいI君に拍手!2年以上事務業務でお世話になったFさんも来ていただきました。本当に外来、手術調整、請求を含めお世話になりました。そしてローテーターの3人(K先生は来月も)ともF医大の同級であったので、修了会は学生時代の逸話暴露でもりあがりました。まさにこの会のために毎日毎日、忙しく働いているようなものです。研修医の先生方との宴会は一番の栄養”ドリンク”ですとくだらないダジャレが口をついてしまいます。
今年は麻酔管理件数の落ち込みが危惧されましたが、9月までの数は3000件を超えました。このままのペースで行けば、すくなくとも昨年と同様の4000件少しに手が届きそいうです。10室しかない手術室数、少ない人員でよく頑張ってくれていると感謝しています。
平田学