2014年12月
2014年12月29日
PDPHに詳しくなる?(1)
積雪が危惧された南岸低気圧でしたが、現在の気温をみると都心では雨で、八王子でみぞれ、青梅で湿雪といった感じなのでしょうか?通過位置が、陸に近かったため、気温低下が少なかったのでしょう。元旦に初日の出を見るのは新しい年の始まりを実感するのに大事な行事なのですが、京都では(地上では)見れそうにありません。どころか大みそかの夜から元日にかけては少し荒れそうな気がします。大みそかの午後には山陰沖日本海に小型低気圧。ん?後方にはもちろん強い寒気を伴っています。低気圧前方では等圧線は縦ではなくどちらかというと横に寝ており、後方へ縦へ。高層のウインドプロファイルがネットから探し出せませんが、偏西風の蛇行が疑われ、おそらく低層の顔は小型低気圧ですが、中高層では切離低気圧の顔を持っているのでしょうか?天気図の予測では北陸から東北南部を通る予測らしいです。しかしこいつはなかなか予測通りに動かないこともあるようで、南方をとおれば東京でも突風や落雷が発生したり、短時間の強い降雨(降雪)があるかもしれません。京都の大みそかの夜は低気圧通過前の南西の風により大阪湾から流れ込む雲により雨(夕方以降の気温が下がればみぞれ?)、この低気圧の通過後強い寒気の侵入を伴った冬型となり、朝から降雪となりそうな予感です。
ブログの検索キワードでPDPHが多く見られるので、ちらちらと論文を読んでみました。
BJAの1.Post-dural puncture headache: pathogenesis, prevention and treatment, Anaesthesiaから 2.Accidental dural puncture and post dural puncture headache in obstetric anaesthesia: presentation and management: A 23-year survey in district general hospital, ちょっとマイナーですが3.International Journal of General MedicineからPost-dural puncture headache.
まずPDPHを区別しなければならない。脊髄クモ膜下麻酔後のものと硬膜外穿刺時の偶発穿刺によるもの(ADPH, accidental dural puncture headace)。なぜなら当たり前ですが、発生頻度が全く違うからです。前者は1%前後、後者は85%(2)。そして症状も後者の方が強い。特に後者で低髄液症状を強く呈するものでは、まれではあるが、頭蓋内出血を引き起こす可能性もあり、適切なフォローの必要があります(1)。Vandamらは頭痛の消失までの期間は7日以内が72%、6か月以内が87%と報告しましたが、前者と後者では大きく違うと考えられます。前者では針の細径化と形状改良により、頻度だけでなく回復までの期間も短くなっていると考えられます。
大掃除で忙しいので、これで一時中断しますが、早めに詳細を追加したいと思います。
平田学
2014年12月27日
lockout time=1:00 AM
昨日は手術室大忘年会でした。1月に転勤になるA 先生の送別会も兼ねておりました。
A先生は7年にわたって、当医局を支えてくれました。きさくな人柄でおやじギャグにはもっとも理解がありました。一方実は”裏番長”でもあり、専攻医をよく指導?(得意ワザは目をキラキラさせながら、”何か面白い話ない?”攻撃)してくれました。残念ながらしばらくは遠方でお仕事となります。帰洛のおりにはぜひとも、またうちで働いて欲しいと思っています。
院長先生もご招待しての会でしたが、いつもとおりものともせず盛り上がります。師長の”アナ雪”あり、そして私の隣は18歳(仕様)の係長。みんな天然のエンターテナーです。2次会では某専攻医先生の大暴露!今年も盛り上がりました。
本当に、はしゃいでもいいんです!手術室も麻酔科も少数精鋭で一年を通して、そして強烈な12月の大繁忙大混乱状態を乗り切りました。MEさんも本当によくサポートしてくれました。クリスマスの夜に麻酔科管理件数は4000件を突破し、昨日までで4021件。本日もいわゆる定期臨時手術を2件施行しており、年内に4030件に手がとどくかもしれません。とにかく昨年の数を上回ることができました。感謝です。10室しかない手術室でこの数は驚異的です。O先生のスケジュールコントロール、手術室の術間隔減少プロトコール、病棟の努力(定時出帰室、ライン確保等)などすべてがうまく調和して行われた結果だと思います。皆様に感謝です。
前回の臨床麻酔学会でのはしごラーメンをブログ上で把握されたため、相方からは深夜ラーメンをきつく禁じられてはおりますが、昨夜は例外と判断しました。研修医有志を引き連れ、大豊ラーメンへ、K君が良く食べるということなので、チャーシューメン-餃子-ビールセット×6としました。完食。やっぱり深夜チャーシュメンは旨い。
1時前には帰宅しました。宴会の途中で今日は家を出る際、鍵を持って出なかったのを思い出しました。1時なのでまだだれか起きていると思い、”ピンポン”を数回押したが、反応なし。たいがいこの音に反応して、うちの悪犬が吠えながら玄関まで出てくるのですが、全く反応なし。電話で何回もコールするが、出る気配もない。ひょっとして誰かが帰る前の深夜ラーメンを偶然目撃し、相方にメールでもしているのではないかと疑心暗鬼になり、早々に病院に引き返すこととしました。
しんしんと冷えていました。忘年会の特異日なので、タクシー一台見つかりません。
大石内蔵助もこのような寒さの中を山科まで帰ったのでしょうか?必死のパッチで病院に着きましたが、まだオンコール、当直は働いておりました。ご苦労様。つらいのは私一人ではありませんでした。
朝、家に連絡をしてみると、全く気付かなかったと一笑に付されました。でも着信あったでしょと尋ねると、緊急で呼び出されていると思い、その連絡だと思っていたとのこと。
rocked out転じてlocked outの夜でした。
平田学
2014年12月18日
Congratulation!
麻酔科専門医試験までは、試験を有する認定はJBPOTしかなく、ある意味試金石となると同時に、受かればmotivationが上ります。
同じ位の年次の者が、情報を共有しながら自らの位置を把握し、弱点を克服するとともに、お互いに刺激し合って勉強していったのも要因と思います。
来年度も3~4人程受験すると思います が、それをサポートできるよう実臨床にも、試験対策にも役立つ勉強会等が企画できれば面白いのではないか、またこれが更新組の勉強にも役立つのではないかと考えています。とにかく congratulation!
2014年12月13日
まだまだ青いよ
昨日の勉強会は私の担当。先にERASを"枕"として
引き続き
今日では研修医の先生に管理してもらう肝切除術でも5~6mg/kg/hで、食道手術でも同程度で管理できていると思います。もちろん術後の血栓症やAKI併発の頻度に差はないと思います。
晶質液は急速大量輸液を行うと血管内皮(構造)障害をきたすといわれており、liberal管理下での急速大量輸液は必然的に間質への大量の体液シフトがおこります。高侵襲長時間手術では最終的にタンパク成分を伴ったシフトとなってしまい、血漿膠質浸透圧も低下してします。上述の高侵襲手術時にrestrictive管理をいしなければならなかった時代は、細胞外液型輸液剤が主流でした。また膠質剤としてはアルブミン製剤が主体で、使いづらい面が多く、前者を大量に使わざるを得なかったのが実情でしょう。逆の言い方をすれば、術中の安全域を広めるため、すなわち十分な血管内容量を保持するため”逃げる”分を考慮し、wet sideとしたほうが、”術中”は安全であったからと考えられます。逆に術後に負担をかけていた可能性があったともいえるでしょう。
現状はどうでしょうか?術中は血管内保持効果の高く、安全域の広い人工膠質が十分に使えますし、術前の傾口補水の併用により、生理的な”術前貯蓄”が可能です。これらの効果もあり、高侵襲長時間のハイリスク症例において総輸液量を安全にしぼることができるようになったのだと考えます。もちろんこの”安全に”という部分を施行するため、信頼性の高いパラメータを用いたGDTが有用となってくるのだと思います。各パラメータには一長一短がありますが(例えばマシモから得られるPVIは非侵襲的で解釈をするうえでも簡便ですが、気腹操作などに伴い信頼性が低下するケースもあるそうです)、施設ごと、症例カテゴリーごとに適応できるGDTプロトコールを考えてゆけばよいのではないかと思います。
私ごとですが、いよいよ明日で49,アラ!50ですが、先輩方からは"先生、まだまだ青いよ"といわれます。まだまだ未熟者なので、明日は"行きつけさん"でおすすめ料理でワインをいただき、"真っ赤に熟したい"と計画中です。
平田学
2014年12月07日
師走初回勉強会
12月初めの勉強会は抄読会形式ではなく、研修医先生向きに局所麻酔薬の総論についてM先生よりレクチャー。
Naチャンネルについての概説とその分布。分布に絡めて、副作用とその発現順序についての説明。各局所麻酔薬の極量。物理化学特性について;脂溶性、タンパク結合率、pKa等について研修医の先生に質問をしながら進めていかれました。そして重症治療時に用いられるとしての脂肪製剤の用法、用量についての説明。
かなり研修医の先生の食いつきも良かったと思います。M先生、全身麻酔中の中枢神経副作用はマスクされているので、注意しなければならないと強調しておられましたが、確かにそのとおりです。ただ痙攣波が出た時にBISで疑うことはできないのでしょうか?Cardiothorac Vasc Anesthに投稿されたSeizure after aortic clamp release: a bispectral index pitfall.には大動脈遮断解除時の痙攣波をEEGで捉え、その際BISの急激な変化が見られたことを提示しているし、Anaesthesiaにはレミフェンタニルによって誘発された全身性痙攣時にBIS値の急激な低下を認め、プロポフォールの投与により前値に復した症例を提示しています。痙攣時にBISは上るケースもあれば下がるケースもあり、これは発作時の脳波波形とBISのアルゴリズムに依存していそうです。麻酔薬により痙攣閾値がどうなるかは、もちろん種類によって違うと思いますが、通常より多めの局所麻酔薬を使用しており、この投与と因果関係を持って急激にBIS値が変化するようであれば、raw EEG画面で波形を確認、疑わしければ、全身麻酔中の局所麻酔中毒も鑑別に入れる必要性があると考えます。
私の勤める病院では師走に入って、昨年同様、臨時、緊急手術が急増しています。昨日も5例以上(19時時点)の手術があり、複数直並列となりましたので、私もサポートに行きました。今年は麻酔科管理件数が減るのではないかと思っていましたが、この師走の追い込みを考えると今年も4000件を超えていきそうです。来年は数を増やすということより、全スタッフの福利厚生を主眼目標に尽力してゆきたいと思います。
平田学