2015年01月

2015年01月24日

やっちまったなー!

 今週は久しぶりに当直に入りました。そこまで忙しくはなかったのですが、当直も終わりかけの7時前に外線。麻酔科オンコールからのヘルプ要請コールかと思いきや、N先生から、何やら必死です。よく聞くと火事で新幹線が止まってて、在来線で病院に向かうとのことで、始業開始時に間に合わないかもしれないとの連絡。何とか担当の部屋を用意し、間に合いました。

 消化器外科医ですが、当科では麻酔標榜医、集中治療専門医取得のため研修しています。ガタイもよく、見た目も体育会系バリバリ。なかなか芸達者で、先週の土曜に行われた外科系新年会では、I君と組んで、○―○ポコをもじった芸を披露してくれました。I君のヨタローぶりも半端なかったと思います。

 男らしい外科医の彼は、最近の外科医をネタにしておりました。

 N:「よーし、じゃー世の中にはどんな外科医がいるんだあ?」

 I: 「かっこつけて、○○シュアばかりで止血している外科医がいたんですよー」

 N:「なーにいー?!  やっちまったなー!!」

 I: 「外科医は黙って」

 N:「圧迫止血」

I: 「外科医は黙って」

 N:「圧迫止血」

こんなネタを続けざまにやっておりました。少しシュールなネタで、手術室長の私にとっては多少苦笑いでしたが、以前opeatorであった方が多い上層部にはうけがよく、他の有力候補を抑えて優勝をかっさらっていきました。芸は身を助けるはず。

 

 当直明け、自宅で仮眠をとったあと18時からハンズオンセミナーに参加。腎臓内科と合同で、エコーガイド下中心静脈穿刺とバスキュラーアクセス確保をファントムとモデルを使って実践。研修医の先生中心に多数集まって頂きました。穿刺ブースには人だかりができ、予定時間を超え2時間近くとなりました。予想以上の人数が集まり、2月にももう一度開催する予定となっております。参加できなかったかたはそちらでどうぞ。協力していただいたCOVIDIENさん、ありがとうございました。

 

 昨日金曜の医局会、バッカス先生の集中治療医学会の予演。心外術後のAKIのリスク因子の解析について。もうひとつは研修医I先生の抄読会。抄読会のネタは確かon pump VS off pump CABGの術後腎障害に関する論文だったと思います。詳細は正確なタイトルを確認してから挙げたいと思います。

最近セプザイリスが検索キーとなっていることが多いので、どこかでBlood Purificationに乗った論文でも読んでみようと思います。

 

3週後は集中治療医学会総会です。エントリーしている発表は月曜に集中しています。後見人はM副部長におまかせしています。私は更新のための参加が必要で、当直明けの火曜に参加したいと考えています。

 

                平田学

 

 

 

 

 



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2015年01月10日

PDPHに詳しくなる?3

 元日、2日の京都市内の2日にわたる大雪はJPCZによる雪雲によるものだと思います。JPCZとはJapan sea Polar air mass Convergence Zoneの略です。日本海寒気団収束帯といわれます。私のイメージとしては台風が近づく1日から2日前に大雨や突風をもたらすにいわゆる外側の雲=弧状の収束帯に似ているなという印象です。大陸から日本付近に吹いてくる寒気は中国国境に近い北朝鮮にある白頭山付近で2分され、その後日本海中部で収束します。風が収束するところでは雲が発達し、これが局地的な大雪をもたらします。この局地性を裏付けるよう、3日の日に東海道新幹線に乗った人は、新大阪付近では全く雪がなかったのに天王山を左手に越えるあたりから残雪を認め、京都市内に入った途端、雪の量が激増したのを見かけたと思います。これほど局地性があるのも特徴です。収束帯進行方向の左側では反時計まわりの渦度をともなった積乱雲が発達することがあり、台風の時は収束帯の西側、JPCZでは東側に激しい降雨(降雪)や時として竜巻を含む突風をきたすことがあるそうです。不思議なのは、厳冬といわれた昨年はJPCZがぶれることなく北陸以北にかかることが多く、南に移動しても若狭湾付近までで、名古屋市内に降雪をきたすことはあっても、京都市内ではこの機序による降雪がなかったことです。ちなみに昨冬の京都市内の積雪は南岸低気圧によるものが主でした。根拠はありませんが、このJPCZのぶれこそ、エルニーニョ現象が関与している可能性はないのでしょうか?この仮説が正しいならば、エルニーニョ現象が消退していない以上、もう一度くらいは京都市内でもJPCZによる大雪を見る可能性があるのではないでしょうか?

 

 今週の勉強会はなし。予演でした。O先生、今月フェニックスでおこなわれるSCCMのポスター発表でした。シンプルにまとまっていて見やすく、またoralも非常に聴きやすかった。かなり練習さてているのでしょう。 ビーフジャーキーをよろしく。

 

さて1.Post-dural puncture headache: pathogenesis, prevention and treatment, 2.Accidental dural puncture and post dural puncture headache in obstetric anaesthesia: presentation and management: A 23-year survey in district general hospital, 3.International Journal of General MedicineからPost-dural puncture headache.をちょっとしたネタにしてPDPHの治療についてざっと見てみようと思います。

治療なしでも85%6週以内に症状が消退する(1)としていますが、もちろん治療上ADPは特殊であると考えなければいけません。治療はCSFの置換、穿刺部の閉鎖および脳血管拡張の調整に分類できます(1)。よく症状安静を指示しますが、最近のメタ解析上は否定的と(3)。当院でも最近では離床はほとんど遅らすことはありません。カフェインは古くからある治療法ですが,否定的な意見もかなりあります。3では早期の中等度までなら75から80%ほど有効であるとしています(3)。一日500mgから1000mgをとるように勧めています(1,3)。カフェイン製剤の処方が困難なら、お茶、コーヒーで良いと思います。しかしコーヒー一杯のカフェイン含有量は100mg程なので、5杯以上のコーヒーを飲む必要があり、かなり大変だとおもわれます。玉露茶には150mg程含まれているので、これなら3杯程でしょうか。鎮痛薬も大事ですが、あまり大きくはとりあげられません。NSAIDSはあまり奏功しないようなイメージが強いと思います。対してアセトアミノフェンは有効性が高い、ただし用量上限近くまで投与しなければ有効とならない例があったり、帝王切開症例に併発しやすい肝障害に注意しなければならない点がやや煩雑です。PG産生が少ないのと、NSAIDSと同様COXを阻害しますが、アセトアミノフェンは脳内COX受容体に働くのがこの相違をもたらしているのでしょうか?他の薬物治療としてはACTH製剤(CSFの産生を亢進)(3)やスマトリプチン(脳血管収縮))(1)があげられていますが、日本では使いにくいと思います。特にADPのゴールドスタンダードはブラッドパッチでしょうか?ただし十分なICがもちろん必要です。PDPHの起こりやすい妊婦でですが、一回目の奏効率は70%前後、残りの30%の内2回目が効く可能性は80%程としています(2)3回以上はさらに施行にあったて十分なICが必要と考えますが、あまり一般的ではないとのこと。パッチに使う量は15から20mlまでと考えられるが、注入時に項部痛などが出現する場合はその時点で注入を中止する必要があると考えます。

                
      平田学



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2015年01月01日

PDPHに詳しくなる2

 KIXでもよく目にする。エアアジア機だが、どうも墜落したようです。この時期のインドネシアはちょうど熱帯収束帯が南方に移動してきてる頃です。熱帯収束帯は一年を通して低圧部となっているバンドで、貿易風の原動力になったり、モンスーンの原因になったりします。オーストラリアに夏休みに行ったひとなら、赤道通過前に飛行機がかなり揺れたのを経験しなかったでしょうか?(夏場は北にシフトしています) 行きは夜間にこの地域を通過することが多いので気づきませんが、返りの便で恐ろしい程発達した、hot towers=積乱雲列を見たことがある方がいらっしゃると思います。あれが熱帯収束帯にできるmulti cellsと考えられます。多くは三角形のかなとこ雲を伴い、上空の風速が早いのが見てとれます。事前にシートベルト着用サインが出ており、なぜだろうと思っていると時に恐ろしい程の揺れとなります。おそらく墜落したエアアジア機もこれを回避しようとしたが、積乱雲団が大きすぎ、雲頂の最も低いエリアを高度を上げて通過しようとしたのではないでしょうか?

  全くの想像の世界ですがこのような状況で機体に墜落を生じさせる程の要因として私が考え付くのは2つです。一つは通過中のエリア下方で急速に積乱雲が発達し、その気流に巻き込まれた可能性。えっ、でも上昇気流なら少なくとも墜落するようなことはないんじゃないかと指摘されるでしょうが、この上昇気流は対流圏境界部(かのとこ雲の頂部)で急激に水平方向へ向きが変わります。もし急にこの強い風を側方から受ければ、コントロールが難しくなる可能性もあるのではないでしょうか?もう一つは雷です。2009年だったと思いますが、エールフランス機が墜落したのも赤道周囲ではなかったでしょうか?あの時は雷が原因かもしれないといわれていたと思います。飛行機は遮蔽され、安全と考えられますが、実際に雷撃により破損をきたしたという事例も聞きます。航空機には電流が素通りしやすいような仕組みがあるそうですが(元々通信機器を保護するためのもの)、地上の落雷と違い、発生源の雷雲の直近にいるわけですから、雷撃のエネルギー自体が冬の日本海側の落雷と同様けたが違うはずで、少なくとも電子機器を一時的にマヒさせるような可能性を否定できない気がします。

 

さて本題のPDPHについてですが、1.Post-dural puncture headache: pathogenesis, prevention and treatment, 2.Accidental dural puncture and post dural puncture headache in obstetric anaesthesia: presentation and management: A 23-year survey in district general hospital, 3.International Journal of General MedicineからPost-dural puncture headache. をざっと斜め読みしてみました。2ではspianl針によるPDPH1.04%,3では0.161.3%,1では針の形状と太さによる発症率をテーブルにまとめています。Quincke針の25G,26G,27Gそれぞれ325%,0.320%,1.55.6%,pencil-point typeであるWhitacre針の25G,27Gでそれぞれ014.5%,0%としてます。ではADH(accidental dural puncture)はどうか?1ではspinal針によるPDPHの頻度と同時にテーブル上にTouhy針による発生率は70%としています。2では妊産婦との限定下では8086%でそのうち26%は穿刺時に気付かないとのこと。従って、テストドーズで広範囲のブロックをきたす場合は硬膜外への局所麻酔薬、麻薬の投与は慎重にならざるをえません。あるいは通常どおり投与するのであれば、ICUでの観察等、呼吸を十分に観察できる環境下に置くのがベターと考えます。ADPとなった場合は効率に頭痛を合併する訳ですから、手術が終わり落ち着いた時点で、見込まれる症状の経過、起こり得る症状および合併症、ブラッドパッチを含む治療法につきICしておく必要があると思います。若干前にもどりますが、ではなぜpencil-point針でPDPHが少ないのでしょうか?穿刺時の硬膜の破断面が不規則で炎症が起こりやすく、癒着、癒合しやすいためと言われています。実際に犬の硬膜に意図的に欠損を作った場合、1週間で閉鎖を認めました(1)。そしてこの修復は硬膜切開部から始まり、フィブリン化で促進されると。これがpencil-point針によるPDPHの起こしにくいさとを説明する一つの要因と考えられます。またフィブリン化は硬膜切開周囲組織の炎症および出血に起因するといわれ、これもブラッドパッチが有効とする根拠となっています。

Quincke針を用いてspinal tapを行う時に私も良く長軸方向にベベルの向きを合わせなさい。そうすれば通過時の抵抗が減り結果的に穿刺孔が小さくなるよと言われていました。しかし実は硬膜線維の走行は一様でなく、あまり根拠がないといわれています。

 では頭痛は何時はじまるのでしょうか?66%48時間に起こり、90%3日以内に起こります。しかしまれながら5日~14日に起こることもあると。症状としては前頭部、後頭部全体に焼け付くようなあるいは金属様の痛みが拡がり、頸部や肩に放散することが多い(1)、起立時に増悪し、臥位で回復する、ときに嘔気や項部を伴う痛みであると記載されています(3)。大事なのは鑑別診断です。偏頭痛悪化は問診、徴候から鑑別可能です。見逃してはいけないのが頭蓋内占拠病変による脳圧亢進症状と頭蓋内出血です。疑えば画像診断を迅速に行い専門医に相談しましょう。

 このまま書き続けると新年から冗長となってしまうので、本日は診断までとし、治療はまた次回にしたいと思います。

 雪雲の侵入が朝はなくなったので、京都では初日の出がみられるかもしれません。

 さきいか片手にビールでめでたく迎えたいと思います。

 

                  平田学

 

 

 

 



mh5963ya at 05:25|PermalinkComments(0)