2015年02月

2015年02月28日

覚醒下帰宅

昨日の抄読会は2010年のAnaesthesiaよりRapid sequence spinal anaesthesia for category-1 urgency caesarean section: a case series.今月でICUローテーション終了となるT先生の発表。カテゴリー1の超緊急帝王切開、言い換えれば30分ルールが厳密に適応となる帝王切開につき、可能な限り簡素化、効率化下穿刺手法を導入し、その有効性を検討したもの。3例以外はspinalで施行できた。消毒はクロルヘキシジンの1回のみ、局麻はせず、基本的に単回試行のみにはかなり違和感があるが、68分で手技が終了し手術に移行できるというならば、非常に魅力的と考えます。ただ術前のICをどうするのか、脊髄クモ膜下麻酔の禁忌症例を確実に除外できるのか(血小板数結果を待っている時間はないだろうし、ましてや凝固検査なんて待ってられない)疑問な部分もあります。

夜のスケジュールはタイトで、まず夕方から京都吸入麻酔セミナーへ。大学近傍でした。研修医の先生のデスフルラン麻酔につき提示させていただきました。現在、私達の手術室ではORSYSを導入しています。医療安全上の問題から、術後レントゲンを撮影する症例が増えており、麻酔覚醒を始めてから退室するまでの時間を正確に計測できません。そこで私達の施設では、麻酔覚醒を開始できる条件になった時点で覚醒開始マークをORSYSチャート上に記入しています。こうすることによって、麻酔覚醒開始から抜管までの時間、そして覚醒開始から退室までの時間を正確に計算することが可能となりました。同様に前半でも麻酔導入が終了し、必要なラインをとり終えた後に、導入終了マークを入力しており、純粋に麻酔導入に必要とした時間を算出できるようにしています。

上記を利用して研修医管理症例での覚醒開始→抜管時間、覚醒開始→退室時間を計算してみました。どちらもセボフルランに比しデスフルランの方が早い傾向にありましたが、有意差はありませんでした。抜管後の認知機能の回復は明らかにデスフルランのほうが早いのですが、差を生じなかったのは不思議です。そこで吸入停止からMAC awakeに低下するまでの時間を両者で比較するとセボフルランの方が早い。不思議です。チャート上の吸入麻酔濃度を見てみると、スライドのように、デスフルランでは吸入停止後、一過性に呼気濃度が上昇し、その後急激に濃度が下がっているのに対し、セボフルランでは上昇は見られず、低下の速度はデスほどではないですが、吸入停止後、steadyにさがっていきます。従ってMAC awakeになるまでの時間はセボのほうが早くなっているようです。おそらく退室前には濃度が逆転し、デスのほうが、優位に下がっているため、覚醒度としてはデスの方がよくなるのだと理解できます。デスの一過性の呼気濃度上昇は高い流量の洗い出しに伴って起こっていますが、勉強不足の私にはそのメカニズムを正確に説明できません。デスの組織-血液分配係数、血液-ガス分配係数の特性がおおいに関与していると思われますが。

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 プレゼン後、急いで高台寺のSODOHへ。研修医のお疲れ様の会に参加。中締めしたあと、2次会部隊と別れて、私は先斗町へ。会食後帰宅しました。昨日は鍵を持っていましたので、lock-outされることはなく、持続的な睡眠が確保できました。
                 平田学 

 

 



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2015年02月15日

マンスリーだよ全員集合!

 さて当直明けに関西マンスリーがありました。関西地方会で主催される症例検討会です。明けでおそくなり、2題目終了時の参加となってしまい、この内容には追随できず。3題目はロマノ-ワード症候群についてでした。3型ではβブロッカーが第一選択ではなく、Naブロッカーが良いとのこと。これは知りませんでした。遺伝子検査がされてなければ、βブロッカー投与によるTp-eをみながら、反応がなければⅠbを使うべきと。なかなか興味深い話でした。

 帰りには元同僚であったH先生と一緒になりました。なんでも阪神百貨店は改装にはいるとのこと。まず鮮魚店でまぐろを買いました。そして気になっていた燻製やさんに。うまいにきまっている、うまいに決まっているけども、若干セレブで、学会明けのおけらに近い私には手が出ませんでした。ぐっすん!  つぎは真鯛の燻製を買いたい!ありそでないのは、生肉の燻製。ユッケの中はとろとろ、外は燻されたものがあれば、即買いです。食品衛生法がどうかわかりませんが、鹿肉のユッケの燻製なぞあれば、絶品だと思います。

 その後大丸を訪問、阪急に移動しましたが、あまりの人の多さに酔ってしまい、帰宅を決定しました。

 貧乏性の私は、いつもは環状線で京橋まで出て、京阪に乗り継ぐのですが、この日は直明けということもあり、梅田から淀屋橋まで地下鉄で移動しました。おかげで座ることができました。

 マンスリーは、私のような高齢者準備段階の、指の間から記憶が砂のように漏れて行くものにとっても記憶の活性化に役立つ会です。若い麻酔科医ももっともっと参加すべきと考えます。みんなでマンスリーに出て、さあ、みんなで考えよう!です。

                  平田学 



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2015年02月08日

卵が先かミトコンドリアが先か?

 お願いしていた敗血症フォーラム2015に参加させていただきました。一つはプレセプシンについての知識を深めたかったこと。もう一つはS先生の講演があり、その内容が先生の研究領域を多いに含む内容である可能性が高かったため。

 プレセプシンは敗血症早期診断に非常に有用なマーカーであると理解しました。またピットフォールも存在することもわかりました。私が疑問に思ったのは、腎機能障害例でのプレセプシン濃度変化について。CKDでは上がる傾向にあり(1)、血液透析患者では値がばらばら(2)AKIでは上がらない(3)という話がありました。

  1→確か第3席のT先生だったと思いますが、、プレセプシンの生成にはIL-6が関与するとのこと。そうであれば、他のメディエーターも絡む可能性はあります。CKDではメディエーターのクリアランスが落ちており、これが、プレセプシンの生成を助長するのではないかと思われること。またCKDでは細胞免疫が低下傾向で、易感染性をきたしやすいから高い可能性があるのではないかと考えます。またeGFRが低下するのに相関して、プレセプシン濃度が上昇することに関しての私の意見です。もしプレセプシンが電荷をほとんど伴わなければ、プレセプシンの分子量自体が3KDと中分子量なので、糸球体濾過を受けると考えます。尿細管でほとんど再吸収されないのであればクレアチニンに近い動態となるので、上記が説明できます。

 2→これも分子量で説明がつくと思います。上記のようにプレセプシンは中分子量ですから、血液透析で除去されます。血液透析は観血的に行いますので、(透析後の)透析日にはプレセプシン濃度が低く、非透析日には高いということになると思います。それを裏付けるのであれば、ICUで連日SLEDを行っているnon-sepsisの患者さんで確認するという手があるのではないでしょうか?

  3→これはAKIを起こしてきている病態によるのではないでしょうか?sepsisに伴うAKIであれば、クリアランスも悪く高値となると思います。non-sepsisではMODSでも伴わない限り、上がらないのでないでしょうか。必ず低いとは思えないのですが。

 

 S先生の話は目からうろこでした。講演後にお酒を飲みながら、話をうかがいましたが、興味深かったのは、p and d ampsをミトコンドリアを軸にして一元論化をはかろうとする考え。そこには真核細胞の進化の歴史がベースにあると。また真核細胞の進化とは裏を返せば、ミトコンドリアの進化の話。ミトコンドリアが細胞内に入った(寄生した)ときにはミトコンドリア自体にもマトリックスを含めた、細胞基質や小器官があったのではないかという仮説。すなわち真核細胞の発生は、ミトコンドリア機能を持った原核細胞であるミトコンドリアの先祖が、よりエネルギー産生に適した環境を得るため、ある原核細胞に寄生しようとしたのが最初ではないか。従って、そのプロトタイプは元々敵だったわけです。ミトコンドリアは潜入しなければなりませんから、宿主から身を守らなければなりません。自分に必要な核心部分のDNAを除き、宿主からの攻撃対象となるタンパクの設計図すなわちDNAは宿主のDNA内に収めるように適応しました。このようにして真核細胞は生まれたのではないかという話を根拠を元に展開されていきました。失礼ながら、なぜこの先生は基礎の教授ではなくて麻酔科という臨床の教授なのか不思議でたまりません!本当に失礼しました!生物学的統一()理論ともゆうべきでしょうか。私達はミトコンドリアを利用して進化してきたと思っていましたが、逆にミトコンドリアにあやつられて、進化してきたとしか思えません。ミトコンドリア内の遺伝子がある意味神の設計図かもしれません。

 どうも私もミトコンドリア教に入信してしまったようです。明日は当直なので、一旦帰洛し、また火曜の夕方に上京しようとおもいます。本日はいつもの築地はスルーです。

 

                  平田 学

 



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