2015年05月

2015年05月14日

いつでも加温を

 昨週の医局会の勉強会は私の担当でした。

初心者向けに周術期体温管理についての講義。まず非周術期の熱出納の基礎について概説。次に周術期に重要な自律性体温調節のメカニズムと中枢と抹消受容器の解剖・生理について説明しました。中枢は高温に弱いため、温ニューロンが多く存在し、抹消では寒冷反応を起こす頻度が多いため冷ニューロンが多いこと。ただし暑熱環境下の高温時には即時に働く緊急避難的な大量発汗が重要であるが、交感神経によって支配されている汗腺が、実は伝達はアドレナリン作動性ではなくコリン作動性の伝導速度の速い節後線維が支配していることを補足しました。非麻酔時には閾値間域が0.2℃ほどの間に制御されているが、麻酔中は範囲が広くなるため自律性体温調節が抑制されること、高侵襲、長時間手術ではサイトカイン等の影響により閾値間域が右にシフトしてゆくことについても概説しました。したがって体温調節反応の起きていない状況下での、平均体温や抹消-深部体温(中枢温)較差の計測がその後の体温調節反応を制御する上で重要となることについても説明しました。

 体温調節性血管反応として暑熱環境下では皮下静脈層への血流プールがラジエータのように働き効率的に熱を逃がすこと。寒冷環境下では深層での動静脈対向流流形成により熱消失を巧妙に防いでいることを説明した。このような反応は麻酔下でも起こり得て、十分な観察やモニタリングで指摘が可能であることを示しました。

 相対的低体温(閾値間域より左方に平均体温値が存在)時には血管応答→NST→シバリングの順に進むが、浅麻酔時には前2者は観察されうるので、その時点で麻酔深度を十分にしておく等の対応が重要であることを説明しました。むろん周術期を通しての表面加温の重要性については十分に強調しました。

 加温以外の予防策としてはMgの補充、綿密なopioid transitionNSAIDsの投与を例に挙げ、起こってしまえば1mg/kgほどのペチジンがNNTが高いことを説明しました。

 

 翌日は中央手術室の新人歓迎会。恒例によって私が今年の4人を紹介、また新規麻酔科入局者についても要望がありましたので、紹介いたしました。その後はわが麻酔科のクールボコ”2人が外科医ねたに引き続き、新ネタ、かっこつけた麻酔科編をリリース、激受けでした。その後は師長、係長によるちょいゆるの(言ってることは辛口)”10.5秒バズーカあり、寒くなることはありませんでした。

 楽しい雰囲気の中3次会まで顔を出して3時台に帰宅したところ案の定相方からお叱りを受けました。理由は”3次回まで顔出したら、下の先生が上司の悪口が言えないでしょと。ごもっとも。帰宅後の加温が必要でした。

 

                           平田学



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2015年05月07日

人生の回帰方程式

 子供の日。その子供の頃のこの時期といえば、全く遊ぶことしか考えていませんでした。中学の時も連休中は、オールナイトニッポンを2部まで聴き、朝5時に就眠、12時過ぎに起床、その後今では死語となっているゲーセンと立ち読みのため本屋さんをはしご”(今の飲み屋のはしご癖はこのころに育成されたのかもしれません)とろくな学徒生活ではありませんでした。もちろん宿題をするのも子供の日の夜。この頃にもっと向学心をもってやっていれば、国を動かせるような大きな仕事に携われていたかもしれません?? 本屋さんには久しぶりに用事があり、行ってまいりました。また歩きで京都駅方面へ。3か月前となったため、気象予報士学科試験の参考書を買いにいきました。今年の12月で50台に突入するので、短期記憶が保たれているうちに受けておこうと思っています。なぜかというとそれも中学時代に関連するものです。昨年高校(中高一貫)の同窓会があり、わざわざ名古屋まで帰りました。参加者ほぼ全員が玉手箱症候群。お前はだれじゃ状態です。そのなかで、ひときわ背の高いH君から声をかけられました。彼の特徴から彼であることはすぐわかりました。彼とは中学の時からの同級なのですが、ちょい飲みしながら会話を温めていくと、やはり何をしているのかという質問。「医師をしてるが、麻酔科医という少し偏固な人が多い科で仕事をしている。僕はその中ではまともな方だよ。」とおどけて返答。本来は手術時の侵襲制御、周術期管理を担う非常にストレスフルで繊細な仕事と胸を張って申し上げたいところだが、ここでかぶいてしまうのが私のお調子のりな性格なのでしょう。高校に入り最終的には文転した私のことを知っていた彼は少し驚き、「走りの気象予報士にでもなっており、その関係の仕事でもしているのかと思っていた。」と。僕は小学校からの気象おたくで、確かにそちらの専門にも興味があり、最初は理学部志向でした。熱く希望する分野(惑星物理学等)でしたが、残念ながら相手方からはあまり望まれておりませんでした。たいていの入試科目に私の大苦手な数学と物理があったからです。現在ではPCでもやってくれる多変数微分方程式を手動で解ける頭が必要だったのでしょうか(それとも当時電気トラブルに弱かった大型コンピュータの停電対策だったのでしょうか)?にもかかわらず、気象学に対する思い入れは多少廃れたにしろ残っております。そこで短期記憶力が急速増悪する前の40台にという話になるのです。もちろん難しいとは思いますし聞いていますが、チャレンジしてみたいと思います。

 そろそろ8月の急性期輸液管理研究会に向けて、データ整理を始めました。ボルベン導入により、アルブミン使用量はどうなったのか、輸血使用量はどうなったのか、また伴う問題点はないのか示してゆきたいと思います。データをみればみるほど、術中あるいは周術期体液管理として人工膠質液投与のベース理論としてのPGDTや術中晶質輸液を減らすと考えられる術前ORTの重要性が認識されます。極端な話この3者は三位一体と考えられます。この研究会のデータを処理しながらこの点についても個人的に掘り下げていきたいと思います。

 たとえ数学は苦手でも、誰でも人生の回帰方程式は立てられますし、必ず時間が解いてくれるものだと確信しております。

                           平田学

 



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