2015年08月

2015年08月25日

秋よ来い。

 先週の金曜日に昨年も催された術後疼痛懇話会に参加させていただきました。府立医大の柴崎先生のミニレクチャーと和歌山県立医大の川股教授の特別講演がありました。柴崎先生はミクログリアと痛みについての話。ミクログリアは外胚葉主体の中枢神経系において珍しく中胚葉由来です。中枢神経内での免疫担当細胞と考えられ、損傷組織の貪食や修復にかかわっているといわれています。神経損傷が起これば、ニューロンや他のグリアからサイトカインが放出されますが、それに反応してミクログリアが集積してくるのでしょう。ミクログリアはマクロファージと似かよった性質を持っているので、おそらくこの修復過程でメディエーターを放出すると考えられますが、これが急性期痛の原因の一つとなっているのでしょうか?順調に修復・再生が進行し、炎症消退すれば、この痛みは消失してゆくのでしょうが、何等かの原因により、このミクログリアの離散が抑制されれば、慢性炎症ひいては慢性疼痛へと進む可能性が考えられるのではないでしょうか。ミクログリアがマクロファージの親戚?ならばマクロファージの似通った形質をもつかもしれません。単球からイノシトールリン脂質の介在下に分化するマクロファージは炎症を惹起するタイプのM1マクロファージと抗炎症性に働くM2マクロファージに分かれますが、ミクログリアにもこのような分化形態が認められる可能性はないでしょうか?もしそうだとして、慢性疼痛にM1マクロファージ様のミクログリアが関与するとすれば、それをM2タイプに分化誘導することによって、局所慢性炎症に伴う疼痛メカニズムを抑制することが可能にはならないのでしょうか?ちょっと妄想でした。

 川股先生はオピオイドによる呼吸抑制についての講演で、クリアで理路整然とされていました。生理、解剖の深い知識についても適所にバランスよくおりまぜられており、聞き無精の私でも集中して聴講できました。オピオイドは橋の呼吸中枢を抑制する。橋の呼吸中枢は複数部位あり、オピオイドの種類やその血中濃度によって抑制パターンに違いが出る可能性がある。臨床症状として最も早く出現する抑制症状としては、呼吸パターンやリズムの異常で、これは旧来型の呼吸モニタリングでは感知されにくいとのことでした。これは目からうろこで、術中、安全に自発呼吸が出せる手術であれば、呼吸数と分時換気量をモニタリングしておき、それが安全域にはいっていれば、術後のオピオイドによる呼吸抑制を回避できると考えがちな私達への大きな警鐘でした。術後の呼吸パターンモニタリングは早急に開発されるべき必要性があると感じました。

 気が付けばもう8月も終わり近く、秋目前です。秋はお酒も食べ物もうまく大好きです。今年も暑かったので、早く涼しくなれと願っておりますが、ただ周りからはアキられないよう奮闘努力をおしまぬようにしていきたいと思います。

 

               平田学                 



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2015年08月10日

 真夏のリクルートメント

 もう1週間以上たってしまいましたが、先週の金曜日に豚肺を用いた呼吸器管理のためのwet -laboが開催されました。私は裏方でして、ほとんど救命センターのO先生に丸投げしてしまいました。すみません。病棟看護師さん、MEさん、理学療法士さんや研修医の先生に参加していただき、盛況に終わりました。Covidienさんの全面協力でした。ありがとうございました。看護師さんで興味があったのは閉鎖式と開放式の吸引の違いによる肺の縮みかただったそうです。開放式吸引では回路を外したとたんに肺が急激に縮んでゆく様子を見ていただき、そのあとのリクルートメントの重要性について再認識していただきました。また研修医の先生には喉頭が付いている材料に触れていただき、輪状甲状膜穿刺セットを用いた気道確保を体験していただきました。その後ICUで見ることのあるAPRVを実際の肺の動きを見ながら理解してもらったり、あるいはPEEP圧の違いで肺のふくらみの保持のされ方に違いがある点について理解いただきました。そして釈迦に説法ですが、理学療法士さんには仰臥位と腹臥位による肺のふくらみ方の違い、無気肺を作成した後に改善するために必要な駆動圧の高さなどにつき認識いただきました。呼吸療法はもちろん、術前を含めた周術期を通して進めていくことが重要であり、周術期チームのメンバーがこのようなワークショップを通して一緒に研鑽を重ねていくことはよりチームワークをよくする面からも重要と考えられます。

 土曜日は東京に移動して急性期輸液管理研究会に参加。やはりHES130投与により、輸液量は絞れるようで、これはERASの管理に有利と考えられます。私達のPD症例での検討では、輸血量もセーブできるというデータとなりました。おそらくHES130は止血機能に大きく関与すると考えられる血管内皮の最内層を構成するグリコカリックスの保護効果によるものと考えられます。内皮障害マーカーである内因性トロンボモジュリンを測定すれば、HES130投与例で低いのではないでしょうか。

 周術期セミナーに参加の予定もありますので、ERAS societyなどが推奨するガイドラインにつき疾患別に少し読んでいきたいと考えています。

 

            平田 学



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