2016年03月
2016年03月28日
mega10
本当に素晴らしい会をありがとうございました。先週土曜日、4月から移動になるF先生、N先生と私の送別会をしていただきました。F先生は集中治療のさらなる研修のため関東に、N先生は古巣のN RC病院へ。外科診療をしながら彼もICUの一翼を担うそうです。私はD2 RC病院へ、私は変わらず手術室麻酔に従事することになります。手術室、C2-ICUのスタッフの方々、ME諸氏の方々、薬剤部の先生方、診療科の先生方また院長、副院長先生。また大学から当医局OBでもある教授、准教授の先生方、私達にとっては過分な会で、誠に恐縮でした。そして懐かしい顔も。他施設救命センターで働いているO先生、”3人娘”の先生方、大学院在学の先生方。この中には酒豪のバッカス先生もいました。同窓会ができるほどです。懐かしかった。ロテートしてくれた研修医の先生もきてくれていました。嬉しかった。私は送別会らしい送別会は初めての経験で不謹慎な表現ですが、少し恥ずかしいような、くすぐったいような不思議な感覚もありました。会場を見渡すとすべてお世話になった方々、やはり”人”に助けられたから20年以上もやってこれたのだなと感無量です。今後も”人”を育成し、その間を紡いでいくのが自分の仕事であると再認識しました。
4月からはフランチャイズが東山から上京に変わってしまいます。東山に一つだけ心残りがあります。上記3人娘の一先生から教えてもらったスマイルバーガーです。
正面からは、一見普通サイズに見えますが、側面像は
目が点です。クアトロと言います。4段重ね。これを食べずして次のステップには進めません。山を攻略する意気込みで何とか完食。これでもう東山に未練はありません。
次施設でも、このクワトロのように人の懐深く飛び込んでいきたいと思います。
平田学
2016年03月17日
ねえ 夢ー眠
やはり札幌から帰ってしばらくすると、大量の鼻汁が噴出。北海道は杉が少ないと証明できました。またマスク着用です。隠さないとバカボンパパ状態!
マスクといえば今年はインフルエンザでお世話になりました。発熱もしんどいのですが、
さらに追い打ちをかけるのが関連筋痛症です。20年振りにかかってしまいました。診断後、もちろんすぐにタミフルを内服。これによって、39℃だった熱が1晩で解熱しました。ただこの間珍しく筋攣縮(こむらがえり)が頻発しました。もちろんOS-1(TM)にて脱水は補正していたので、この攣縮はウィルスによる筋症状であったと考えられます。関連筋痛症は3~5日は継続するとよく書いてあります。おそらく残存ウィルスのせい。筋痛症を解消するにはアセトアミノフェンを内服するのが常套手段ですが、実は私はあまりこの薬剤との相性が良くないようです。従ってウィルス自体を抑制する方策を試してみました。解熱後早期の入浴、それも少し高めの温度です。これは他の方には推奨しません。逆に早期の入浴により症状の悪化を招いたり、あるいは予期せぬ副作用をきたす可能性(入浴中の不整脈等)もあります。まねはなさらないで。
慎重に入浴前に水分摂取を行った後、42℃の入浴を20分継続してみました。もちろんこの間もOS-1(TM)を摂取しながら、また脈をとり、頻脈となる場合や、不整脈の散発を疑う場合はその時点で入浴の打ち切りを行うこととしました。また入浴時間は家族の時間をさけ一番最後とし、終了後は60℃の熱水を散布しました。水分摂取が功を奏しているのか20分の入浴中に頻脈や不整脈を呈することはありませんでした。入浴後の体温は入浴前から2℃近くあがり38.3℃。この体温なら十分に抗ウィルス作用を発揮できます。タミフルを内服した後、すぐに睡眠をとりました。2晩目から筋痛は消失しました。
次に2次感染を予防する手段はどうか?インフルエンザウィルスの感染様式は飛沫感染および、接触感染。飛沫感染を予防するためにはマスクの着用、接触感染を防ぐためには手洗いが重要だと思いますが完全ではありません。飛沫はくしゃみと咳によって飛散する。そこでくしゃみや咳嗽を抑えるものがないかどうかについて考えてみました。なぜインフルエンザに罹患するとくしゃみや咳嗽を起こしやすくなるのでしょうか?インフルエンザの侵入経路は上気道で、鼻粘膜や咽頭、喉頭粘膜が第一の感染巣となり、障害されると上皮剥離がおこります。そうなると直下の感覚繊維の末端がむき出しとなると考えられ、神経末端の受攻性があがり、くしゃみや咳嗽の閾値がさがると想像できます。上皮の修復をはかるためにはそれを促す方策が必要となります。古来より金柑は咳嗽を鎮める効果があると言わており、その成分としてビタミンAおよびCを多く含みます。それらは粘膜上皮の再生を促進します。上皮再生が進めば、むき出しになっていた神経末端が被覆されくしゃみや咳の閾値があがるものと考えられました。そこで部屋の十分な加湿(60%)を併用するとともに、金柑を2個ずつ分4で摂取しました。そのおかげなのかどうなのか、発熱から5日で咳嗽、カタル症状も消失しました。
全くアウトローな方法で20年振りのインフルエンザと対決したわけですが、今回のJB-POT講習会では”本道”のお話が得意な讃岐先生の講演がありました。Sedline(TM)
についての講演で、いつもの”さぬちゃんギャグ”がさく裂しておりました。先生は”うけねー“と連発され、嘆いておられましたが、私的には”ばかうけ”でした。
Sedlineの有用性および安全性についてふれられていましたが、これはDSA機能によるものと強調されていました。ちょっと古いですが、2010年のNEJMのレビューにGeneral Anesthesia, Sleep, and Comaがあります。そのなかで麻酔中の脳波について触れられています。麻酔中の脳波は4 phaseに分類されます。
Phase1;浅い鎮静状態。β波の頻度が減少し、αやδ波の頻度が増加する。
ちょっと徐派化。
Phase2;中程度の鎮静状態。PhaseⅠの傾向がさらに強まると同時に後頭導出に比し
前頭導出波形にその傾向が強くなる。Non-REM睡眠stage3の波形に類似する。
Phase3;深い鎮静状態。平坦脳波間にα波とβ波が群発。burst suppression。
麻酔深度が深くなればなるほどαはβ波の活動性は低下し、振幅も減少する。
Phase4;平坦波
手術時の麻酔深度はPhase2~3で維持されるとの記載がありました。
non-REM睡眠はStageⅠ~Ⅳに分類され、StageⅠではθ波とβ波が混在し、さざ波様となることが多いとのこと。Ⅱではα波より少し速いsleeping spindleがでてくる。麻酔中の脳波にも同様の波が出てきます。これを讃岐先生は”ニョロニョロ”とおっしゃていました。Ⅱの浅い時期にはspindleとともに鋭波の一つである瘤波が混在。睡眠深度が深くなるにつれ、spindleの周波数が低下。Ⅲではさらに徐波可が進むとともにspindleは広範囲となるるらしい。Ⅳでは大徐波である丘波中心となる。
麻酔時の深い鎮静による予後悪化の報告(2005年のA and A, Anesthetic Management and One-Year Mortality After Noncardiac
Surgeryなど)が散見され真偽につき結論が得られていないようです。個人的には、Phase3は深すぎで2の深めで維持する方が無難なのではないかと思います。そうなると讃岐先生がおっしゃっていたように、spindleが優位となるようなraw EEGが得られるよう鎮静度を目標とするのが望ましいと考えます。
DSAはどの周波数帯が多いか視覚的に確認できるそうです。spindle波は鎮静が浅いうちはβ波の周波数程度、深くなるとα波の周波数程度となるようなので、DSA表示画面上、α波周波数域に十分な帯域形成をしていること。それとともに、raw
EEG上で優位なspindle 波が確認できることをdeep Phase 2にある指標とすればよいということでしょうか?それが讃岐先生がおっしゃる”いいニョロニョロを出す麻酔”ということなのでしょうか。実際に使えれば、実践してみたいと思います。
ちょっと夢―眠したくなったので、これで終了いたします。
平田学
2016年03月15日
自己研鑽のち換骨奪胎
始発前の京都駅です。なぜこの時間にここにいるのか?
ここに来るためです。昨年の当科JB-POT試験合格率は25%と低下したので、試験の傾向が変わったのかもしれないと思っていました。そこでJSCVA主催の経食道心エコー講習会に4年振りに参加してみました。まず気づいたのは3Dエコーに1単元を割いて解説されていたこと。これは2013年年のASEガイドラインに3Dエコーがしっかり記載されていることに基づいていそうです。基本画像のみならず、MPRの有用性そして臨床応用にまで話がおよんでいました。また1日目の心機能の話のなかでストレインの重要性について強調されていたような気がしました。2015年のASEの心室定量評価に関するガイドラインのなかで、左室収縮機能についての記載があります。FS、EFとともに長軸ストレインが列記されていましたが、
この扱いによるものと考えられます。その他診断に必要な局所解剖学(冠動脈)や画像描出に必要な系統解剖学についても触れられていました。ということは解剖学のベースをしっかりしなさいというメッセージだと思われます。勘ぐれば(素人の私がいうのも何ですが)、次の試験では、2Dエコーおよび3Dエコーを統合した画像問題。たとえば小問1で2D画像について系統解剖学的な知識を要求する問題、小問2で3D画像について局所解剖学知識を要求する問題というように、さらに複合的な問題を出していきますよという暗示のように思ってしまいます。今回講習を受けたので、点数的にはJB-POT認定期間は5年延びることとなりました。しかしガイドラインは変わり、必要とされる知識、技術も変わり、おそらく試験の傾向も変わってくる思われます。となれば今回のような講習会等々にもっと積極的に参加することによりトレンドを把握する必要性がある。また自身の状況を把握するという意味においてJB-POT試験を認定期間保持と切り離して考え積極的に早期に再受験するというような姿勢が私のような中年麻酔科医には適しているような気がします。
第2日終了後、羽田へ移動。
18:00の便で千歳へ。札幌につくと9時前でした。大通りを歩いて、20年程前に行ったおでん屋を探しに。ここで最大の失敗に気づきます。そうだ日曜だ。愕然としながら歩いていると”香林坊”!札幌に金沢?よく見ると酒林坊。外観は昔よく言った福井の”未夢”という飲み屋さん風。中には大江健三郎のようなメガネをかけたご主人がいました。カウンターには単行本がずらずらとならんでいます。好きな作家が浅田次郎という点を突破口にいろいろ話をさせていただきました。個性的で面白い人ですあたまはいわゆる坊主刈りでこれがこの店の”坊”なのでしょう。出してもらった日本酒は北海道と東北のつくり酒屋のもで、ほとんどに杜氏名が明記されています。旨いに決まってます。どれも味わいは深いが竹林のような清澄さがありました。竹を割ったような歯切れのよいご主人は飛び込みの初めて客に腹を割って話をしてくれました。
翌朝は食べに行きたかったものがあり市場へ。もちろん歩きます。市場の裏通りにはおいしい店があるという定理があると思っていますが、ありました。
まぐろあらだきつけ麺です。竹本商店。
熱々。まぐろの深い甘いだしととりの澄んだだしがマッチしてパンチがあるのにランスがよい。麺は自家製全粒粉でもちもちです。札幌を出る前に開店寿司を食べる予定にしていましたのでライスボールはつけませんでしたが、麺を食した後のスープはこれを投入して食べるのが常道と思います。6:00からだそうで、つぎに来るときは開店朝ラーしてみたいと思います。
ヤリイカとニシンのすしは今回の目的だったため、札幌駅近くの”くるくる寿司”
へ。去りかけの冬を堪能したあと低気圧にゆられながら伊丹へ。3日振りの”だすどすイントネーション”に安堵するような残念なような。
この3日間の経験を4月からの姿勢に投影したいと思います。
平田学
2016年03月09日
目標=インフルエンザに負けない気力の醸成
せっかく5日間の有給休暇をもらったのに、そんな時に限って20年ぶりにインフルエンザにかかってしまい、自宅待機(完全に自室に閉じ込めの刑、2m離れてれば大丈夫だと思いますが家族からは”えんがちょ”状態でした)となってしまいました。腹いせに経口炭水化物投与によるインスリン感受性の保持に関連すると思われる論文を荒く2点読んでみました。まず小児を対照としたもの。39℃発熱下で読みましたので適当なところは寛大にお許しください。
Tolerance of, and metabolic effects of, preoperative oral carbohydrate administration in children
腹部および胸部手術を受ける4~17歳のASAⅠあるいはⅡの小児予定手術患児を2群に分けた。Group1;前日夕方から手術の2時間前にかけて12.6%の炭水化物を含む飲料を10ml/kg摂取させた群, Group2;絶飲食グループ。 血漿グルコース濃度, インスリン濃度, IGF-1が測定され、インスリン抵抗性指標としてHOMA-IR(homeostasis model assessment of insulin resistance)が算出された。前2者については手術前、手術後、手術当日の夕方、翌日の朝に測定されていたていました。
結果;前3者に有意差はなし。ただHOMA-IRについては絶飲食群で高かった。
胸腹部手術とされているが、具体的な術式名の記載がなく、どれほどの侵襲がかかる手術かあるいは術後どれくらい絶飲食期間があるのか不明。ただし血糖値やインスリン濃度が不変で、HOMA-IRのみ変化がみられるという点からそれほど高侵襲手術であるとは考えにくい。術後の絶飲食期間は長くはないと考えられるので、インスリン抵抗性の反映指標としてIGF-1を測定している理由がわかりません。
では成人例で低侵襲の手術ではどうでしょうか?