2016年10月

2016年10月02日

あっさり、こってり どっちも大事

以外にも福知山はラーメンが有名です。その福知山で箸が立つほどのラーメンを見つけました。
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 昔の天一にあった超こってりのようです。不思議と飲み干しても、翌日おなかはゆるくなりませんでした。膠質ラーメンと呼びたくなるようなゼラチン様です。

 膠質といえば、輸液ですが、どちらかといえば晶質輸液の動向のほうが気になります。もう一度ラーメンに例えれば、晶質があっさり 膠質がこってりといったところでしょうか?投与晶質液を等張と仮定し、消化器手術でもありうる時間500mlで投与したとします。そこまで残らないと思いますが、1時間に血管内に125ml、間質に375ml残ったとします。

 すると疑問を生じます。間質にしみだした水はリンパ系によってドレナージされるはずですが、一般的に言われているのは時間当たりのリンパ系の処理能力は160mlほどが限界のはず。細胞内とのやりとりを考慮にいれても時間200mlほどの水が間質に蓄積されていく計算になります。10時間の手術で5000mlの晶質輸液をすると2Lの浮腫を生じるというのはいささか多すぎるような気がします。

 リンパ系の処理能力の手術侵襲にともなう経時変化はどうなのでしょうか?おそらく初期には普段の処理能力を超えて増加するので、間質浮腫を抑制するであろうが、侵襲によるサイトカイン産生に伴い、リンパ系にも炎症を生じドレナージ能力が激減し、浮腫形成が急激に増長されるのではないでしょうか?

 もう一つ疑問なのはリンパ系から静脈内に戻ったときの水の役割。単純に考えれば、循環血液に編入され、前負荷として働きそうですがどうでしょうか?あまり言及している文献をみつけられません。

 では晶質輸液の投与速度はいかほどにしたらよいのでしょうか?私は研修医の先生には消化器系の比較的高侵襲長時間手術ではほぼ等張輸液の1%ブドウ糖加酢酸リンゲル(理論上は高張ですが、実測はほぼ等張)を時間4ml/kgで投与し、フロートラックシステムなどから得られるの動的パラメータを参考に、HES130で必要分だけ補いなさいと指導しています。至適膠質投与量は私の頭では煩雑すぎて推定できないので、動的パラメータを指標にしています。なぜ晶質輸液の投与速度が4ml/kg/hなのかは、多田羅先生の周術期の水動態-シミュレーションによる分析という文献にあるシミュレーションからです。10ml/kgの生食を15分、30分、60分で投与すると血漿増量効果は15分がもっとも高いが、その効果は90分しかつづかないとのこと。しかし私が注目したいのはいずれの投与速度でも150分で血漿中の投与生食は理論的に0となるという点。投与後の残余血漿量は減衰曲線となり、またおそらく輸液を持続投与した場合の血管容量は線形近似できる曲線となるので同一化はできませんが、150分で10ml/kgの輸液による残余血漿量がなくなるのであれば、その1/4ほどを時間当たりいれればよいのではないかというアバウトな考えになります。

 最近はStarling Equationの解釈もかなり変わってきているようです。F=LpS(Pc-Pi)-σ(πp-πi)〕。ややこしい式ですが、要するに血管側と間質で綱引きをして強いのはどっちだ?ということ。その参加者に静水圧と膠質浸透圧がいるということ。以前の解釈では毛細血管の動脈側では血管側が勝ち、静脈側では血管側が負けるのでトータル0であった。実際に間質の静水圧や膠質浸透圧が計測できるようになると、前者は非常に低くまた後者は予想より高いことがわかり、毛細血管全長にわたって血管側が勝利することがわかってきた。すなわち水は漏れるもの。

 となれば、形状は管ではないが、間質も導管と考えることができる。導管の手前にESL(endothelial surface layer)というダムがあるというだけ。通常は発電のために必要な水量がダム上流から下流に向かって流れているだけだが、高侵襲長時間手術や敗血症性ショックに伴う大量輸液投与では大雨が降ったごとくダムのトップを越えて下流に濁流が押し寄せるというようなイメージを持ちます。ちなみに電力の有効利用のため、夜間電力を用いてダム下流から上流に水はポンプでくみ上げられているそうですが、これがリンパ系といったところでしょうか?普段はあまり日のあたらない間質を主役にするならば、その入り口である血管側も大事ですが、その出口の主役たるリンパ系も同様に大事だと思われます。ただしリンパ系に関する知識は全く皆無に等しい私なので、その知識に関しては基礎構築から始めてゆきたいと思います。

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                        平田 学



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