2017年01月

2017年01月01日

 Phoenix Year

 私たちが指向型輸液戦略を行い、守ろうとしている場所は主に毛細血管内皮、細胞間質、間質内微細リンパ管と考えられます。グリコカリックスを含む、内皮表層構造は注目されていているものの、間質やリンパ管はあまり取り上げられることがありません。

 難解ですが、Physiological Reviews, 2012年のINTERSTITIAL FLUID AND LYMPH FORMATION AND TRANSPORT: PHYSIOLOGICAL REGULATION AND ROLES IN INFLAMMATION AND CANCERにざっと目を通してみます。

 まず私たちが認識を変えなければならないのは、細胞間質のイメージについて、ここは毛細血管内腔および細胞内から2つの性質の異なる 半透膜で仕切られた 出入りの激しい空き部屋“というイメージでしたが、そうでもないようです。よく知られているように間質にはグルコサミノグリカン=GAGs(ヒアルロン酸,ヘパリン硫酸など)、コラーゲンおよびエラスチンが含まれ、GAGsはゲル化しており水をためることができ、後ろ2者がおもに支持構造となっていると思われます。ですからへちまのような感じなのでしょうか?浮腫の”現場で無用な場所とのイメージですが、これも正解ではなさそうです。この”へちま“は危機管理倉庫であり、水が過剰な時は非常に高い効率性をもってリンパ系に水を導出し、また脱水時には”へちま水を細胞内に補給する、ラクダのこぶのようなものだと考えられます。

 術前経口補水については一説では、補給してもすぐに尿に排出されてしまうのであまり意味がないのではないかという意見もありますが、これは循環血液を主たるターゲットとして考えているためと考えます。すなわち投与速度が早すぎるのではないか。間質に上記のような有用な貯留機能があるとすれば、おそらく緩徐と考えられる細胞間質内でのゲル構造への水の取り込み速度を基準として補水を行う必要性があるのではないかと考えます。(循環血液やその周囲環境を推定する計測法はあるものの、細胞間質を含めた水動態を解析するような臨床研究はあまり見かけないような気がします)。経口補水法では体の水分受給状況に合わせて血管内に水分が取り込まれる(水分過剰時は吸収が抑制される)と考えられます。術中輸液動態を考えると、輸液反応性はいろいろな要因によりかなり短時間で状況が変わるのを経験します。輸液反応性指標を考慮しない一定速度の術前経静脈補水は緩徐に行っても過剰となれば、必ず血管内皮にシェアストレスを生じ、すでにこの時点で内皮障害を生じうると考えられます。

 酔いがまわってきたので、元日はここまでです。ラクダのこぶといえば、初めて食べました、といっても中東に行ったわけではありません。先日四条油小路にある地球の幸せを夢見るバクというジビエ専門のお店で、わが医局の忘年会を施行しました。そこで食しましたが、ラクダと気づかないほど、臭みはありませんでした。他にもワニやクマ等普段は食べられないおいしいジビエいただき満足でした。ワインとの相性がばっちりです。気にいりましたので、おせちも注文しました。

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 酉年ですがホー、オウッ!と納得させるような一年にしたいと思います。

 

           平田 学

 

   

 

 



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