2018年01月

2018年01月03日

年の初めに

 癌の進展におけるグリコカリックスの特徴は何か?まずざっと読んだのはJournal of INTERNAL MEDICINEのレビューでThe glycocalyx and its significant in human medicine

内科の雑誌だけあって、様々な病態でのglycocalyx(GCX)の関与につき記載されています。その中に癌におけるGCXの役割についての記載があります。GCXを構成するglycosaminoglycans(GAGs)に含まれるheparan sulphate(HS)は癌の転移を抑制する一方、matrix metalloproteinase(MMP)の放出を促進し、また腫瘍血管新生にもかかわっているようです。また計算モデルによる解析においてですが、分厚くなったproteoglycanは接着部位でのインテグリンの房状集合化をもたらし腫瘍進展に影響を及ぼすようです。syndecansも成長因子提示や受容体活性化、基質接着や細胞間接着に関与するのであるが、腫瘍成長促進及び抑制のいずれにも関わるようです。癌の転移について重要なのは、宿主側のGCXの状況ではなく、癌細胞側のGCXの状態によるところが多そうです。一部の癌ではGCX構成要素を障害することにより転移を抑制することができる可能性について示唆されています。面白いのは癌細胞のGCXも健常内皮細胞と同様mechanotransducerとなっていて、間質へのシェアストレスを感知し、MMPを含む腫瘍進展因子を発現させる模様。

 ということは、癌細胞に特異的な部分的GCX肥厚のメカニズムを解析できれば、標識化できる可能性があるかもしれません。また癌細胞GCX内の構成成分、例えばGAGの代謝活性が亢進しているのであれば、それ自体あるいはその産生材料に対するアナログ治療介入ができるのではないでしょうか?転移はGCXが深く関わっていることを考えれば、その可能性を低下させる一つの手段になるようなき気がするのですが。

 

 昨年の総手術数は7003件と7000件台にのりました。また全身麻酔件数も4066件と4000件をこえました。ひとえにもくもくと働いていただいたメディカルスタッフの方々のおかげと思っております。ありがとうございました。

 

新年早々から少し飛躍しすぎの初夢じみたことを書いてしまいましたが、新年のめでたさとお酒のせいにしたいと思います。

 

                  平田 学

 



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