2018年09月
2018年09月22日
第2回京都周術期懇話会
昨日, エドワーズライフサイエンスさんの協賛で京都周術期懇話会が開催されました。昨年と同様京都第一第二赤十字病院の先生方にご参加いただきました。昨年は外科と麻酔科の親睦をはかるという目的で両診療科のみでしたが, 今年度は泌尿器科, 産婦人科の先生方にもご参加いただきました。第一日赤の印藤先生はフロートラックを用いた開腹手術の循環管理について発表されていました。Restrictive intraoperative fluid optimisation
algorithm improves outcomes in patients undergoing pancreaticoduodenectomy: A
prospective multicentre randomized controlled trial に記載されているプロトコールを用いていましたが, 特徴は介入トリガーがSVV20%超であること。かなり辛い条件で,
やはり従来に比べかなり輸液量をしぼることができたとのことです。
興味深かったのはオーディエンスレスポンスシステムを用いた意見交換。泌尿器科の先生からはダビンチ手術は、患者さんのストレスは下げるが, 麻酔科医自身のストレスを高めている可能性があるのではないかという私たちにとってはありがたいご意見がでるとともに、出血時はあまり静脈圧を上げないような管理をしてほしいとの厳しい意見もありました。また産婦人科の先生からは重症帝王切開後の術後循環管理時, なかなかよいモニターがないことをご相談されましたので、クリアサイトによる管理をお勧めいたしました。
総じて各先生方の満足度も高く, よい懇話会であったと思います。来年度はさらに診療科の枠が超えられればさらに面白い会合になると考えます。
平田 学
2018年09月12日
ヒールはビール好き
先々週、先週と麻酔科学会の地方会に参加させていただきました。松山も金沢も滞在時間は24時間未満で、かなりタイトではありました。金沢ではよく舌鼓を打たせていただいた”勝一”さんが、おでん屋として復活しており、久しぶりの味を堪能することができました。地酒だけでなくビールによく合うおでんでした。
東海北陸地方会において西田先生のお話をお聞きしましたが、いつものようにわかりやすい講演でした。敗血症のトッピックスについて圧倒的な内容量を短時間でお話しされていましたが、せわしさをまったく感じないお話し振りでした。最も興味を持ったのは
フロセミドの話でした。西田先生はフロセミドの腎髄質に対してエネルギー負荷をかけない性質に関心がおありのようでした。現状ではフロセミドに腎保護効果はなく、どちらかというと悪役に近い存在と言われています。一方的に”ヒール”と呼ばれるフロセミドには同情さえ感じます。
サイトカインは分子量20~30kDaほどで健常な糸球体はほぼ透過させない。しかし敗血症により糸球体障害を来すと容易に透過するようになると考えます。敗血症における高サイトカイン血症が多臓器障害症候群の主因であるなら、サイトカインの尿中排泄が進めば症候改善に有利となる可能性があります。ボーマン嚢内に透過したサイトカインは近位尿細管で再吸収を受けると考えられ、再吸収を抑制することによりサイトカインの排泄は促進されると考えます。逆に再吸収が増えれば、他のタンパクが尿細管障害を引き起こすように、近位尿細管障害を惹起すると思われます。素直に考えれば、”臓器にやさしい正義の味方”カリペプチドが第一選択となりそうですが、そうでしょうか?カリペプチドの主な作用機序は輸入細動脈を拡張し糸球体血流を増やす点にあります。敗血症により糸球体内皮の障害が起こっているはずなのにそこに負荷をかけると、さらに内皮障害が助長される可能性はないのでしょうか?また近位尿細管の再吸収抑制に関しては、カリぺリチドよりフロセミドの方が強力であると思われます。またこれを腎髄質にあまりエネルギー負荷をかけないで行うことができる。私にはあまりヒールに見えません。いつか見返してやってほしいと思います。
ビールでも飲みながらヒールをたたえたいと思います。
平田 学