2020年03月

2020年03月07日

ミクロの決死隊

 臨床麻酔を行う上では、普段はあまり感染症学、特にウイルス学を重要視することがないのですが、現在の医療現場を取り巻く状況を考えると、復習の必要性があります。そもそもコロナ等風邪症候群を引き起こすウイルスはどこから侵入するのか?いきなり下気道から入り込んでくるわけではなく、上気道粘膜からです。そのためそのバリアとして私たちは鼻を活用していると考えられます。普段の私たちが健康でいる間にも鼻粘膜や咽頭粘膜で、ウイルスと私たちの防御機構が戦闘を続けていると考えます(ミクロの決死隊?)。まずウイルスにとって、最初の防御壁となるのは何か?鼻汁(鼻汁)でしょうか?緑膿菌も鼻汁に類似したバイオフィルムを作り、保護外套としているのですから、鼻汁のねばねばも物理化学的な保護効果があるものと考えます。鼻汁内には抗ウイルス作用を持つといわれるラクトフェリンやNOが含まれています。適度な運動は感冒予防となるともいわれますが、運動により呼気中のNOは増えますからあながち間違いでもないのかもしれません(NOのタイプにもよると思いますが)。ウイルスが上皮にとりつくには細胞表面の受容体が必要そうです。宿主側の反応としては、Toll様受容体を介しウイルスの一部をPAMPsと認識し、サイトカインの放出とそれに引き続く細胞性、液性免疫の活性化がおこるものと考えます。この反応が十分であれば、ウイルスのコピー放出を抑制し、下気道感染を防止する可能性を高めるものと考えられます。下気道となると上皮が組織生理学的に上気道と異なりすぎていて、もちろん同様には考えられないのが悩ましいところと思います。

では上記の抗原提示→認識→免疫応答を増強させるのに手っ取り早い方法は何かと考えると、単純に局所体温の上昇を考え付きます。また粘膜上でのウイルスの侵入量を減少させる簡便な方法として加湿が挙げられると思います。ということは上気道におけるウイルス感染防止の最も安価な方法は上気道の加湿保温という、当たり前の結論になりそうです。現況のマスク不足を鑑みると、マスク以外での上気道加湿加温保護を考えた方がよいのではと個人的に思います。

      平田 学



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